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はじまりへの旅のshinoのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
4.4
"バイバイ、マミー!"

アメリカ北西部の、森の奥。自然の条理に従い自給自足で暮らす、聡明な6人の子どもたちと、彼らの教育を担う父のベン。
体にペイントをほどこし、長男が森で鹿を狩る冒頭のシーン。あれ、私観る映画どこかで間違った?「実録!アフリカ北西部の先住民族」でもかけちゃったかな?って少し焦りました。笑

パッケージのカラフルポップな感じとは少しギャップがある内容で、「普通ってなに?」っていう永久に答えの出ない問いが、色んな視点から降ってくる。

昔から躁鬱に苦しんでいた母レスリーが命を絶ち、子どもたちは大きなバスで外の世界に乗り出す。
母の葬儀が行われる2400キロ先のニューメキシコを目指して!彼らが未知の社会と出会う、はじまりへの旅!

大袈裟な描写もあったけど、すごく好きなテーマ。ウィゴ・モーテンセンは相変わらず汚ければ汚いほどかっこ良さが増す謎の体質だし、子どもたちの心がまあきれいで洗われます。

森で生き抜くための狩りにロッククライミング、戦術からヨガまでアスリート並みに仕上がった子どもたち。
語学も哲学も宗教も、音楽まで完璧に教えられる父ベンが、まず奇跡(映画だもの)
一般的に親が濁しそうな性教育的な質問にも、子どもたちには真実を赤裸々に伝えるんですよ。あわわわ。

あらゆる名門大学に合格した秀才の長男は、下界のレディーたちを前にすると急に緊張。次男は自分たちの生活に少しずつ疑問を持ち始める。
環境がどうあれ子どもの反抗期はあるし、親だってときに悪気なく間違うこともあるんだよね。

全員が全員の「普通」、「こうあるべき」をどこかに持っていて主張するんだけど、きっとどれも間違いではなくて、"本当に正しいこと"は何なのかも分からない。それがこの映画の真髄みたいなものなのでしょう…

長男は、父のあの教えがあれば大丈夫。きっと女の子に優しくできるよ。
下の子たちも、生きる力はばっちりだし、いつだって「自分の言葉」で話すことを諦めなければ、きっと聞き入れてうなずく人にたくさん出会えるはず。

何事もバランスが大事、という普遍的な意見に落ち着きました。
せめて卵って何から産まれるかとか、自分が口にするものの起源も知らずに生きていたくはないなと強く思う。

あと、やはり自然の中で生きるともっとワイルドでガサツになると思うんですよ…子どもたち白くて清潔感ありすぎなところが少し物足りない(映画だもの)。虫とか食べてて欲しかったかな。笑
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