ケイ

クリード チャンプを継ぐ男のケイのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

「証明するんだ。」
「何を?」
「俺は“過ち”じゃない。」

個人的に人生Best10に入る大好きな映画

主人公のアドニスは、偉大すぎる父を持ったが故の葛藤やプレッシャーを背負っている。
何処へ行っても会ったことの無い父と比べられてしまい、自分自身の存在を誰も見てくれないと感じている。
しかし、生前の父の親友かつライバルであったロッキーを師匠にする事で、ボクサーとしても人間としても成長していく。
また、妻も親友も失ってしまったロッキーは、アドニスと交流することで忘れかけていた昔の気持ちを取り戻していく。

最初は父と比べられたくない、父の名を汚したくないという思いで偽名を使っていたが、最後のコンランとの試合では「クリード」の名を背負って懸命に闘い、試合を観た者全員に「アポロ・クリードの息子」ではなく、アドニス・クリードというボクサーとして認められた。

実況者が試合後に言った「チャンピオンは試合に勝ち、若者は勝負に勝った。」という言葉通り、親の七光りと言われ続けてきた自分という存在を努力によって“本物”だと知らしめたアドニスは“勝負”には勝ったのだ。

現実でも、自分という存在のアイデンティティに迷うことはあるだろう。
そんな時にこの映画は「自分が何者かは他者ではなく、自分で決めろ!」とことを教えてくれる作品であると感じた。

この作品での好きなシーンは数え切れないほどある。
例えば、拘置所の中でロッキーがアドニスを諭すシーン、
癌と闘っているロッキーを励ますためにアドニスがバイカー達と走っていくシーン、
試合直前に母からのプレゼントのシーン、
KOされかけた時に母、恋人、師匠の姿を思い出し立ち上がるシーン…
上げ続けたらきりがない。

もちろん、ストーリーだけではなくボクシングのシーンも素晴らしい。
過去の「ロッキー」シリーズは、ボクシングとしてはあまりリアリティは無かったが、今作は長いカットで試合を映すことで
臨場感や緊張感を持続させることに成功している。
なにより、パンチの音から実際殴った時の重量感、殴られた時の痛みなどが画面から直に伝わってくる程のリアルさだ。
コンランとのパンチの応酬のシーンは、迫力が凄くてボクシング映画で1番の試合シーンだ。

この映画を撮ったときの、ライアン・クーグラー監督は長編映画を1本しか撮ったことの無いほぼ無名な監督だったが、どうしてもクリードを撮りたくて、2回もスタローンに直談判しに行く行動力は本当に凄いと思うし、それを読み、若手に任せる決断をしたスタローンも凄い。
marvelスタジオのブラックパンサーの監督に任命されたのも納得の才能と技術を持つクーグラー監督の今後の作品が楽しみでならない。
アドニスを演じたマイケル・B・ジョーダンも観る者の心を動かす演技も凄かったので、クリード2作目もとても期待している。

兎にも角にも、ストーリー、ボクシング共に素晴らしい映画なので是非観てみてほしい。
ケイ

ケイ