スリリングだ!五感を研ぎ澄ませて見る世界。
「まず思い浮かべるんだ。そしたら話しかけてくる。それを聞くんだ。」
なんて豊かな世界なのだろう。目が見える者には決して見えない、細部までが丁寧に描かれている。
もちろん危険だ。それでも危険を怖れず、白杖なしで、堂々と歩く。その姿は自信にあふれ、やはり格好良く、診療所の人たちが憧れてしまうのも無理はない。
部屋に閉じこもっているエヴァ。彼女に新しい世界を見せたくて、さりげなく関心を惹こうとするイアン。さほど言葉を交えることもなしに、二人が繊細なコミュニケーションを重ねて、心を通わせていく。その過程もスリリングだ。
陽光が眩しいリスボンの街並みが美しい。そして、アレクサンドラ・マリア・ララに魅了された。
反響定位。エコーロケーション。初めて知った。全編を通じて、導線が発火するようなビリビリした音がする。その音が緊迫感を煽る。他にも響いてくる様々な音に、観る側は否が応でも敏感になる。
映画館を出ると不思議な感覚に陥った。光も、音も、空気の温度も湿度も語りかけてくるようだ。それでも人混みで人にぶつかってしまった。
「彼らは見えるのに見ていない」
私のことだ。