Omizu

下層都市のOmizuのレビュー・感想・評価

下層都市(1946年製作の映画)
3.8
【第1回カンヌ映画祭 パルムドール】
カンヌの最高賞を受賞したインド唯一の作品。ゴーリキーの『どん底』に触発され、インドリアリズム映画の先駆けになった。社会批判的な内容からかインド国内では公開されなかったようだ。

原題の「Neecha Nagar」は「Lowly City」であり、金持ちの住む場所と貧乏人たちが住む場所とを視覚的に分かりやすくしたような設定である。

歌や踊りはあまりない、というもののやはりそこはインド、たしかに踊りはあまりないが歌は随所に溢れている。

再開発のため、貧乏人たちの住む地区に泥水が垂れ流され病気がまん延する。そのうち水もとめられ病院に人が殺到する。しかし病院は金持ちが「ちゃんとケアしてますよ」という建前のための施設であることからボイコットするようになる。

金持ちの勝手な開発と貧乏人との溝を縦軸としつつ、下層都市のリーダーである主人公と金持ちの娘マヤとの恋を並行して描く。

マヤ役は監督の奥さんとのこと。きりりとした顔の女優さん、対して主人公の妹ルパは聖母のような優しい顔立ち。二人の女性が魅力的。

リアリズムを基調としつつも、最後のシーンに顕著なように表現主義的な手法も用いられていてとてもよかった。

一種の寓話としての物語もよかったし、映像にも工夫があってとてもよい。非常に優れた作品。
Omizu

Omizu