あーさん

アリスのままでのあーさんのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
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先延ばしにするのはやめよう!シリーズ その5

才色兼備のアリス(ジュリアン・ムーア)は、50歳。コロンビア大学で言語学を教え、学生に絶大な人気を誇っていた。
家族は医師である夫ジョン(アレック・ボールドウィン)と医学生の長男トム(ハンター・パリッシュ)、法科大を出て幸せな結婚をした長女アナ(ケイト・ボスワース)。少し気がかりなのは、大学に行かず女優を目指す次女のリディア(クリステン・スチュワート)だが、公私ともに充実、絵に描いたような幸せな日々を送っていた。
そんなある日、アリスは講義の最中にある一つの言葉が思い出せなくなる。
その後も大学のキャンパス内で、自分がどこにいるかわからなくなるなど、今までになかったことが起こり始める。
彼女は若年性アルツハイマー病に侵されていたのだ。。

よりにもよって言語学者、頭脳明晰なアリスにとって、言葉や記憶が失われていくのは、どんなに辛いことだっただろう。
まだまだこれから、、だったのに。

ちょうど彼女と同世代の私には、泣くよりもリアルさやシビアさの方が先に来て、この先どうなってしまうのだろう?と終始不安な気持ちで見守ることしかできなかった。

妻や母のことをどれだけ思っていても心配でも、家族には皆自分たちの暮らしがあり、誰も100%アリスの気持ちに寄り添うことはできない。

とても重い時間が過ぎていく。

彼女の尊厳を打ち壊すような出来事の数々に、観ている方も胸が痛む。

病気にならずとも子育ての手が離れ、夫や息子、娘達との関係も今までとは変わっていくちょうど節目の時。

家族の負担になるのは、アリス自身が一番許せないことだった。
そんな彼女が選択したのは。。






ここからネタバレ
↓ ↓ ↓ ↓



病気になる前の家族との関係。
それが、とても大事だと思った。

しばしば人生のピンチは、家族の絆をより一層強くする。
一番自由人でアリスが先行きを心配していた次女リディアが、最後にアリスに寄り添ってくれたのは意外だった。
実は、似た者同士だったのかも。
遺伝性の同じ病気が陽性とわかっても、出産することを決心した長女アナも、アリスと同じ強い意志を持つ逞しい女性だ。

仕事のチャンスを逃したくない気持ちはわかるけれど、今の妻にとって何が大事かよりも、自分の仕事の可能性を選んだ夫は少し残念。。経済的なことや様々な事情もあり、仕方がないのだろうけど。(アレック・ボールドウィンは少し前に観た"ボンジュール・アン"でも一見理解のある風だけど肝心な所わかってない夫役で、それとちょっと被る。。)
親の介護と同じで自分の生活を壊さず、無理のない範囲で続けることは大事だけど、夫婦なのにね…。

辛い話ではあったが、アリスの知性と聡明さが深く心に残る温かい作品だった。
自分の一生を蝶の一生に例えるシークエンスが素敵。
比較的近い記憶は無くなっていっても、遠い記憶、、その昔事故で亡くなった母と姉、アルコールに溺れる前の若かりし頃の父との日々は最後まで残るのだろうか。。
折しも、実家の片付けを手伝いに行き、私物を整理する機会があったので、しみじみと家族について考えさせられた。

そして、あの素晴らしいスピーチの場面を、私はずっと忘れないだろう。
そういえば、スピーチの会場に付き添ってくれたのは息子だった(息子にしてもらえるのは、これくらいだなぁ笑)。


ジュリアン・ムーアのアカデミー賞主演女優賞も納得!!
あーさん

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