アラサーちゃん

アリスのままでのアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.5
家族からアリスに贈る、ラブレターのようなお話。

「still Alice」っていま考えると、とてもすてきなタイトル。「アリスのままで」「どうかアリス、すてきなきみのままでいて」っていう愛にあふれたタイトルのように思う。

しずかな"凪"みたいな映画だった。大きな時化がやってきたあとの、しずかでどこまでも続く"凪"。
幸せで満ち足りていた家族に「若年性アルツハイマー」という究極の絶望が襲ったあとの、ゆるやかな"凪"。

突如としてショッキングなシーンが流れるわけでもなく、その淡々と流れていく日常風景に切り取られた、包み込むような大きな"愛"とほんのささいな"ひずみ"に、涙がふと流れそうになる。そんな映画だった

大切な記憶を徐々になくしていく難しいアリスという役をジュリアン・ムーアが演じていますけど、それ以上にやっぱり次女のリディアを演じたクリスティン・スチュワートがすごくよかったです。
みんながみんな優しく穏やかに、大事に大事にアリスに接していくなかで、まっすぐ素直に母親と向き合い、怒り、拒み、謝り、向き直る彼女の尊さ。彼女の存在が、物語のなか(アリス)にとってもありがたかったでしょうし、観ているほうからしてもとてもいいアクセントになって観やすかったです。

彼女のスピーチシーンはもちろん胸が打たれたのだけど、やっぱりささいなシーンにかいまみる彼女の心の機微がすごく刺さりました。
「ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい」と自身の病気をカミングアウトしたときにひたすら謝っているアリスだったり、「癌ならよかった」と溜まったストレスを夫にぶちまけるアリスだったり。

音楽がまたよかった。シンプルでメロディというよりはSEに近い感じ。アリスの心情にリンクしてうまく効果的になっていたと思う。