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ボーダーラインのStoryVillageのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
3.9
陰鬱とした現実。

日本にいると、麻薬犯罪は、あくまでも自分には関係のないテレビの中にしかない犯罪っていう印象になるけど、この映画を見る限り、アメリカの麻薬密輸多発地帯である国境付近での攻防は、政治と軍事を伴う戦争なのだという現実を突きつけられる。

おそらくアメリカでも、その認識は進んでいないようで、メキシコでの現実とアメリカでの認識に齟齬があるようだ。

だが、徐々に侵食されるように南米からの麻薬に冒され、メキシコの現実の方がアメリカ広がりつつある。

このあやふやな境界線こそ、この映画のタイトルである「ボーダーライン」で、もはや戦争といっていい戦いを強いられている現場の者たちと、その中に放り込まれた法の順守を求められる警察から派遣された主人公・ケイトの葛藤が描かれている。

それは善悪の判断するボーダーラインすら冒されていく感覚であり、見たくない現実と、守るべき理想の境界線が、これほどまでにあやふやなものだということを突き付けていて、監督の手腕は見事だと思いました。