ダイアー教授

ボーダーラインのダイアー教授のレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.1
題:狼の世界
製作:2015年、アメリカ
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:テイラー・シェリダン
主演:エミリー・ブラント、ジョシュ・ブローリン、ベネチオ・デルトロ、ダニエル・カルーヤ

上質なクライム・アクションスリラー。個人的にとても好みなジャンルである。
メキシコギャングとかCIAとFBIがどんな組織なのか、その程度のリテラシーは必要かもしれないが、何も知らなくても楽しめると思う。
ネタバレ無しで、3つにまとめてレビューします。

1.映像
迫力満点、現実感満点の映像がスゴい。
国境や国境周辺の住宅地の映像の空撮シーンはミニチュア作って撮影したとのこと。
ヘリかドローンか飛ばして撮ったのかと思った。

2.Sicarioとは?
原題は『SICARIO=シカリオ』、スペイン語で“暗殺者”という意味。
シカリオは短剣を意味し、“熱心党”に因むらしい。

熱心党!?

聖書を読んだことがある人には馴染みがあると思う。
十二使徒に“熱心党のシモン”ってのが出てくるからだ。
熱心党にはシカリ派という武闘派集団がいて、党員は侵略者(ローマ人)を殺しまくっていた。
熱心党員が手にしていた“短剣=シーカ”が転じて、“暗殺者”となったのだ。
劇中、1900年代にタフト大統領が4000人を連れてメキシコ訪問したエピソードが語られる。
熱心党の党員数は聖書によると4000人程度だったらしいので、それに因んでいると思われる。
※偉そうにレビューしましたが、僕はこれを本作を機に知りました。

3.狼の世界
エミリー・ブラント演じるメイサー女史はディアズを捕まえて、仲間の仇を打ちたいと作戦に参加する。
彼女は使命感に燃えているが、規律や倫理観に縛られている。
はっきり言ってミッションの足手まといだ。

一方、ベネチオ演じるアレハンドロさんは首を斬られた妻と酸に投げ入れられた娘の復讐に燃えている。
彼の行動原理は極めて私的だ。

彼はメイサー女史に言い放つ。
「キミは狼の世界では生き残れないよ。」
狼には命乞いも通用しないし、倫理もない。ブラジャーもボサボサの眉毛も気にしない。
狼にあるのは獲物を狩るという“私的な目的”だけなのだ。