この人の映画は、街角で、電信柱に針金でくくりつけられたポスターを見つけるところから始まる。そして上映小屋に赴き、赤子を背負ったもぎりの母ちゃんに鑑賞料を払うあたりが本編、でもって『ありがとうございますぅ⤴︎』と訛りのある言葉でお礼をいただくところがクライマックスだな。あとはまあオマケ。お金払ったし見るかなーって感じ。。でも決して悪い意味じゃあない。街で彼の映画のポスターを見つけることは、ちんどん屋さんを見つける感じと似ている。（本物はほとんど見たことないけど。）ちんどん屋さんは何かの宣伝のためにちんどんしてるわけだけど、観客からするとちんどん屋それ自体を眺める方が興行として楽しめるってゆー、つまり、実存は本質に先立つってやつなんだ。なんじゃいな。

2012年頃高円寺のなんかやばそうな密室の上映会で鑑賞。すごく鮮烈にこの時のことを覚えている。

上映室(？)に入ろうとするもなんだか物騒な雰囲気。室内に入っても異様な空気。

1億円の借金があったり自主製作映画が過激すぎて上映禁止になったりとした過去を持つ方だが圧倒的な異彩を放っていることはすぐにわかった。

渡辺文樹さんは園子温の師匠らしいのだが、「あいつは最低のレイプ魔」と罵倒していたのは(真偽は不明)いまだに覚えている。

ちなみに上映後に一水会顧問の鈴木邦男さんと対談があったのだがこれも場の空気が張り詰めててめったにできない体験だった。

映画そのものは色々と未熟で面白いわけではないんだけど食い入るように観てしまった。

うまく言葉にできないけれども貴重な体験ができた映画でした。

何とコメントすればいいかわからない映画はこれ以来出会っていない。