おいなり

グレイテスト・ショーマンのおいなりのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
4.0
ディア・エヴァン・ハンセンの公開に向けて再見。何を置いても、本作の勝負曲である「This Is Me」の求心力がとにかくものすごい。囁きのように始まるキアラ・セトルの歌声が、やがて自分自身を肯定する力強い叫びとなって周りを引っ張り、壮大なコーラスへと変貌していく様は、もうそれだけで映画的な物語性を帯びてる。

初見は音響の評判がいい劇場を選んだんですが、オープニングナンバーの「The Greatest Show」が始まった瞬間から観客が息を呑んで見守る気配が感じられて、コンサートのような一体感があった。
物語の転換点がほぼ歌で表現されていて、退屈なシーンを極力なくしてテンポよく進んでいくのが「ザ・ミュージカル」という感じ。少年時代のバーナムが歌い出し、それが終わる頃には大人に成長し、二児の父になっている。そういう流れるようなリズムが非常に心地よい。
実在の人物としてモデルになったP.T.バーナム氏のいろいろ後ろ暗い史実と比較すると、美化しすぎではという指摘もまぁわかるけど、伝記やノンフィクションを念頭に置いた映画ではなく、あくまで御伽噺としてのミュージカル映画なので、個人的にはこんなモンでいいと思う。


ハリウッドが直面するダイバーシティという課題に対して、最もタイムリーに、最も明確なアンサーを打ち出した映画。言葉や物語としてより、劇中歌でそれらが全て説明されるのは、映画としてはちょっとズルいなぁという気もするけど、それでもThis Is Meをはじめとする楽曲の素晴らしさには抗い難い。
傷があっても、人と違っても、それでもこれが私なんだ、という力強いメッセージに、僕を含めて世界中のどれだけの人が勇気付けられたかと思うと、本当に胸が熱くなる。サーカス団の見せ物として実際に存在した彼らを、多様性の象徴として描き直したのも、目の付け所がシャープだと思う。史実がどうであれ、それこそが物語の効能だと信じたい(それがちょっと受け入れ難い、という人の意見ももちろんわかる)。


50前のヒュー・ジャックマンと、40前のミシェル・ウィリアムズが、駆け落ち同然に家を出るのがビジュアル的に無理ありすぎて笑っちゃいました。シーンは美しいんだけどね。
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