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ある貴婦人の肖像のkaitoのレビュー・感想・評価

ある貴婦人の肖像(1996年製作の映画)
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キスについての会話から映画がスタートし、その後に続く演劇のようなモノクロシーンからの女性の視線、手のひらと指に書かれた映画タイトル、からのニコール・キッドマンの涙。
という普通の時代もの映画だと思っていたらなんとも現代的フェミニズム感ビンビンの暗示的なオープニングで驚く。

舞台は1872年のイギリスという、この前観た『眺めのいい部屋』のちょっと前で、個人的になんかタイムリー。しかも、またフィレンツェが登場するとは!テーマ的にも近いものがあると思ったけど、この映画は女性の自由や解放、という問題提起というよりは不幸美人についての話では、という印象。

映像が全体的に面白くて、なにより目を引くのはなんといっても衣装と美術。どれくらい時代考証されたものなのか分からないけど、当時のファッションの流行をしっかり感じることができる。

画面の色使いもしっかり手が込んでいるし、ずーっと主人公の本心が分からないことのメタファーとも思える何か越しの撮影も上手かったり、人体の彫刻とかロウソクとかキリストの壁画とかが背景に描かれていることで何事かを物語っている撮影もまた上手い。旅の思い出シークエンスの古いイルム風映像もどこかジャパニーズ・ホラー感があって面白かった。スローモーションの使い方もなんかいびつで良い。

役者でいうと、今回のマルコヴィッチは心底気持ち悪くてサイコーだったのと、要所要所で登場するヴィゴ・モーテンセンもまた単なるストーキングをする者というよりは誘惑者としての悪魔的役割で良かった。

そういえば、序盤で鎖を引きちぎるリアル・ザンパノが出てきて一瞬笑ったけど、これ『道』のアンサー的なことなのかな。
その後、カメラ倒したようなシーンもやたら登場したけど、『第三の男』オマージュはあんまり感じられなかった。

あと、舞踏会シーンでやたらぶっ倒れる客が出ていたけど、あれはいったい何だったんだろう?
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