半兵衛

現代娼婦考 制服の下のうずきの半兵衛のレビュー・感想・評価

4.1
曽根中生監督のいびつで無機質な演出と前田米造カメラマンによるセンスのある映像が憎しみあう二人の女性のドラマをメロドラマとしての定石から逸脱させ、ハードボイルドなウーマンドラマを形成していく。そしてそんな乾いた心と世界のなかから生々しい殺意が顔を出し、それが爆発する洗車シーンのショッキングさは忘れがたい(サイレント的な映像のセンスにどことなくハネケやブレッソンと共通するものも)。

過去を表現するモノクロ映像が超スタイリッシュ、そして『殺しの烙印』を彷彿とさせさすが清順監督の弟子だけあると感じた。その一方で室内での二組のやり取りをワンカット長回しで無理矢理撮影するところは曽根に助監督としてついていた相米慎二テイストもあるがやはり本作のテクニックに影響を受けたのだろうか。そして幼児による拳銃場面が凄い衝撃的だが、いくらフェイクとはいえよく子供にやらせたな。

潤ますみのゆっくりとして重みのある独特な喋り方が虐げられてきたヒロインのキャラクターに合っていた、一方の彼女を執拗に苛める安田のぞみもサディスティックで傲慢な雰囲気がよく出ている。

歪んでしまった感情が暴発し、本能のままに蠢くヒロインを突き放して観察するようなラストは『ラルジャン』みたい。

寺山修司作詞による挿入歌もストーリーを盛り上げる。
半兵衛

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