blacknessfall

日本暴行暗黒史 異常者の血のblacknessfallのレビュー・感想・評価

3.4
アマプラ、最近何かとりあえず点数だけはありますアピールなのか、いい感じにそれまでアクセスしづらかった日本映画をラインナップしてくれてありがたい。
若松孝二監督の本作もおかげで初鑑賞。

明治(明治維新期)、大正、昭和初期、現代(70年代?)と続くある呪われた血を受継いた男達の凶行を描く本作は若松孝二監督にしてはメッセージ色薄めの日本の陰湿な空気を効果的に活かした猟奇ホラーといった感じ。
凶行と言っても暴行(レイプ)と殺人なんでいつもの若松孝二監督なんだけどそれにある一族の呪われた血脈の話にしたことで猟奇と怪奇の赴きが加わり石井輝男監督のような禍々しさを放っていた。近親相姦も出てくるし、この辺の演出が石井輝男監督に似てたな。

それと現代の主人公の回想形式なのがエドガー・アラン・ポーのような19世紀末前後の怪奇小説のような妖しさもあって、やはり若松孝二監督のわりにちゃんとしたフィクション撮ってるなぁて思った笑

とは言え、反骨・反体制で体制の腐敗を描き映画で権力にケンカを売るのが好きな若松孝二監督なので、初代呪われ凶行男が下賤とされる出生を藩士達から蔑まれ苛められるという設定と藩士達の下劣な描き方は明治維新の四民平等の欺瞞を告発してる。戦時中、出征祝いの時に泣く母親を息子が天皇とお国のために出発する日に泣くなんてと嗜める近所のおっさん達の冷酷さは戦時中の空気その物を再現してる。
で、こう言うと「若松孝二は右翼嫌いのパヨクだろ😏」と本質を突いてやりましたーとばかりに冷笑とイキりをかますバカ(ネトウヨ)がいるけど、それは全く的外れ。本作でも農民運動の指導者がその立場を利用して女性をレイプする描写がある。
言うまでもなく農民運動は右翼的ではない。
要するに若松孝二監督は力で弱者を踏みにじる権力その物が大嫌いなんだよ!そこに左右で物を見ていない。
バカ(ネトウヨ)は自分が党派性でしか物を見ないから他人もそうだと思うのだろう。強者への阿りと保身だけで生きてきたチンケな人間には若松孝二監督の真摯さなぞわかるはずもない。
blacknessfall

blacknessfall