半兵衛

日本暴行暗黒史 異常者の血の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.5
幕末から製作当時の現在まで呪われた村の一族に伝わる血がそれぞれの世代で惨劇を起こしていく様をその子孫が起こした事件を捜査する刑事の視点を通して描いたオムニバスドラマ、ポルノシーンは存在はするもののストーリーの構成や語り口は予想以上に真面目なため重厚な見ごたえがあるし各時代の風俗を最低限の美術で再現しているのも見所(この映画でスタッフに関わった小水一男氏によると時代劇用の鬘を新聞紙で代用してそれをシルエットにして誤魔化したりと涙ぐましい裏方の頑張りがあったとか)。

血に翻弄されていく登場人物たちを通して「日本という国家」、そして頂上に存在する「天皇」をストレートに批判する展開は今となっては時代を痛感するアイテム以上のものにはなっていないが、全盛期だった頃の若松孝二監督と脚本を担当した足立正生(出口出名義)によるポルノを通して日本の闇にあるものを告発するという姿勢をテンポよく捌いていく演出は堪能できる。

役者では一人四役を演じたピンク映画の黎明期から活動してきた野上正義の達者な演技に目を見張る、こうしたしっかりとした演技が出来る俳優がいたからこそずぶの素人まがいの女優さんを主役として起用するというピンク映画のパターンが可能であったのだなと感じる。他にも山本昌平(個人的には『チェンジマン』の人)や久保新二がそれぞれを好演。

ラストでの主人公の決断とその行為による顛末が何とも言えない余韻を残す。
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