あなぐらむ

欲望に狂った愛獣たちのあなぐらむのレビュー・感想・評価

欲望に狂った愛獣たち(2014年製作の映画)
3.9
この年のピンク大賞最優秀作品賞。
山内大輔監督自ら女優・みづなれいへのラブレターだと語る作品(シナリオタイトル「主婦・杏子がしたこと」)。
クールと可愛さが共存する目力満点の美人AV女優みづなれいとともに行く地獄廻りを、ゴア描写満載で描く現代版「天使の恍惚」。我が最初のピンク映画の女神、里見瑶子が助演女優賞受賞の怪演を見せてくれる。

恋人を食わせるために風俗嬢を辞められずにいるうちにその恋人が自殺、虚無の中、道を踏み外しながら、どこか世間から切り離されたような彼女の存在が、作品そのものの「現実からの遊離感」に繋がる。
音楽を廃し、彼女の独白を音楽にしてみせた山内演出は見事。池島ゆたか御大も絶賛の一本。

眼球繋がりというわけではないけど、本作は佐藤寿保の「女虐」のゴアテイストととても似ていて、ただ、みづなれいの艶かしく蠢く身体はまさしくピンク映画の必要十分条件で、当時の池島監督が「完成型に近づいてる」というのはそういうバランスの部分かと思う。
それにしても杏子の恋人であった作家志望の「ハルキ」が目指した「革命」、テロリスト兄妹が目指した「革命」とは何の暗喩なのか。
若松&足立の時代ならすんなり馴染む「革命」が、どうにも掴めない。みづなれい以外が全て肉体的欠損を負う(死ぬ)その凄惨な光景に戦慄を覚える。
それにしても、ベテラン風俗嬢にして女子高生コスが似合うというこの役。これは山内監督の作戦勝ちだろう。この後、女優映画を志向していく山内大輔の前に、朝倉ことみという存在が現れる事になる。