KS

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男のKSのレビュー・感想・評価

5.0
1860年代のアメリカ南部を舞台に、南北戦争の裏にあった歴史を紐解く作品。

金持ちの白人のために作られたプランテーション制度。そこでは黒人奴隷制度だけでなく、貧困層の白人も重い税制に苦められこき使われていた。

本作には、そうした歴史を踏まえた上で、黒人差別は、金持ちが貧困層の白人の不満の吐口として機能させていた事を描く。

“every man as a man"この言葉は、この時代においては差別のない言葉として受け入れられたのだろうが、ここには男女差別が含まれているだろうなと思った。manには人間という大きくとる意味もあるのだろうけれど、manという言葉が人間という大きな意味も含まれているという所に英語圏における男女差別のニュアンスが読み取れるとも捉えられる。

時代は違うが、いまの日本にある技能実習生制度も全く構造は同じだと思う。低賃金に抑えた労働力を使う事で経営層だけが得をし、国籍に関係なく、それにより労働者の賃金は上がらない。こうした人権問題は、経済問題としての側面もあるよなと思った。

そして、南北戦争が終結した後の戦後処理まで描いている所が流石だと思う。いつの時代も繰り返される経済搾取の構造、一度植え付けられた差別意識が簡単に無くなるモノではない事。そして、それはKKKを生むことになる。そして、ビリー・ホリデイ「Strange Fruit」が生まれる。

観ているだけで、これまで本や映画で学んだ事が色々繋がっていく不思議な体験だった。
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