えむえすぷらす

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

5.0
 珍しい南北戦争背景の映画。ジョーンズ自由州を作り、逃亡奴隷や南部軍の弾圧に苦しんだ農民を率いて蜂起したニュートン・ナイトとその彼の子孫のある裁判を描く。

 理不尽な南部軍での体験。軍を抜け故郷に戻り度重なる南部軍の徴発を受けて苦しんでいた銃後の女性達を救うべく抵抗を始める。騎兵が入ってこれない沼地に根拠地を構えジョーンズ郡など近隣郡部まで勢力を広げて南部軍が入れないテリトリーを作り上げるが、北部軍の支援は得られず再び沼地へ戻って持久しているうちに1865年春の南部降伏を迎える。
 戦後、戻ってきた南部富裕層やKKKによるアフリカ系住民虐殺など起きて南北戦争をもってしても平等な社会は生まれずなお奴隷的な立場に追い込もうとする白人達との対立、そして権力の確立へとつながり停滞の100年間がやってくる。

 公民権法ができる前、戦後すぐのアメリカ。ミシシッピー州のデイビス・ナイトはニュートン・ナイトとアフリカ系女性レイチェルの子孫だった事がわかり人種分離政策による異人種婚姻禁止に抵触するとして刑事裁判に掛けられていた。この子孫とニュートンの最後の決意までが交互に語られる。

 飲み込みやすい物語ではない。正義のために戦い勝った事もあるが、大抵はひたすら耐え忍んで心まで折ろうとする連中に抵抗していく日々が続く。それは子孫の時代になっても同じ。大ごとにしたくない州により心を折って追い払おうとする選択肢を強要されそうになる。孤立無援。弁護士すらまともな対応をしない中で彼は祖先に負けると劣らない精神を示す。

 本作の監督・脚本はゲイリー・ロス。この次の作品が泥棒集団劇のオール女性メンバー版の快作「オーシャンズ8」だったりする。「ハンガー・ゲーム」の1作目も手がけており女性主人公ものが上手な印象がありますが、本作でマシュー・マコノヒーを人種に寄りかからない歴史の中の人物をうまく映像化している。