小

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男の小のレビュー・感想・評価

3.7
米南北戦争時代の実話に基づく物語。南軍から脱走し追われる身となったニュートン・ナイトが、同じように脱走した貧しい小作農の白人や奴隷の黒人、総勢500人を率いて南軍100万人を相手に立ち向かう。

北軍に支援を求めるも、受け入れられなかったニュートンは、アメリカ連合国(南軍)、アメリカ合衆国(北軍)のどちらにも属さない「ジョーンズ自由州」の設立を宣言。リンカーン大統領の奴隷解放宣言よりも前に、誰もが平等に生きられることを提唱した。

ということで、あらすじだけ見るとニュートン・ナイトは、「マイノリティーを救う白人男性」であり、本作は「白人救世主映画」というカテゴリーに括られるのかもしれない。

『ストーンウォール』を観た際にググったウェブサイトによると、そうした映画に共通する要素は次のようだ。
http://www.queernewsjunkie.com/entry/stonewall

<・実話に基づいているという触れ込み
 ・非白人が苦しんでいる状況
 ・白人が現れて、苦しんでいる人々を教え導き、非白人のコミュニティを救うという結末>

本作も概ねこれに当てはまる。そしてこういう映画は質の面ではなく、「白人ばかりエエカッコしやがって」みたいな、人種という観点で批判的に捉えられることがある模様。

そうしたことは十分承知しているであろうゲイリー・ロス監督は<10余年の歳月をかけてリサーチを徹底し(た)>(公式ウェブサイト)成果も生かし、本作を単純な「白人救世主映画」にはしていない、と思う。

「ジョーンズ自由州」設立宣言あたりで終了すれば、ありがちかもしれないけれど、スッキリ感動できるストーリーで描き切れそうに思うけれど、南北戦争終結後の闇の部分もキッチリと描き、ニュートン・ナイト個人の苦悩や葛藤を際立たせているような気がする。

ニュートン・ナイトのストーリーに割って入れた、あることで苦悩する彼の息子のシーンも印象的で、「自由を求める戦いに終わりはない」というようなことがテーマなのかも、と思ってしまう。

本作についてウィキペディアによれば、米国で<「白人救世主映画」>という評がある一方で、<使い古された様式のテンプレートから政治的な洞察の火花を出そうと試みる珍しい作品である>とか<ニュートン・ナイトは救世主というよりはむしろ新たな南の化身という他のものとして現れる>といった見方もあるようだけれど、さもありなん。

ただ、「白人救世主映画」だと思って観ていた側からすれば、鑑賞直後、何が言いたいのだろう、と少々面食らったことも事実。エンターテインメントと作家性をバランスよく両立することって、やはりなかなか難しい(個人的にこれに成功したと思うのが『シン・ゴジラ』)。
小