半兵衛

愛と平成の色男の半兵衛のレビュー・感想・評価

愛と平成の色男(1989年製作の映画)
2.5
サックスでもあり歯医者でもあるプレイボーイをめぐるコメディタッチの風俗ドラマであるが、主役の色男を演じるのが松田優作でも伊藤克信でもなく何の味もない大根の石田純一なためひたすら心がなく実存性のない空虚な人間像になっているので彼の言動や行動に薄ら寒さを感じてちょっと怖くなってしまった。特に複数の女の子にモテているのに何の感情も沸かないのはプログラムピクチャーではよくあることとはいえ、役者の演技の影響かまるで感情を持たないモンスターのようになっていて気持ち悪かった。

主人公が吐く気障な台詞もひたすら気色悪くて、森田監督がこれを本当にかっこいいと思っていたのか疑ってしまうレベル。でも森田脚本がバカヤローシリーズをはじめ何本も映像化されていたってことは当時はそれなりに面白がられていたってことなんだろう、きっと。

でも浮わついた台詞や行動をひたすら押し出した作風なのに華やかさが全くないのは、当時のバブル全盛期の世の中に「こんな世の中いつまでも続くわけがないんだ!」と監督が違和感を覚えていたからではないかと思えてくる。だとすると石田純一の言動にワーキャー騒ぐ女性たちも、中身がない作品にひたすら騒ぐ一般市民への苛立ちに感じ取れる。

ラストのヘリコプターでの無理矢理な世界からの脱出も、「バブル(夢)はもうすぐ終わるんだよ」という監督からのメッセージなのかも。カメラが突然揺れてしまうのも社会が崩壊することへの暗示…というのな深読みしすぎか。でもあんなハッピーな物語から『幕末太陽伝』や『貸間あり』のフランキー堺のように逃げ出すのはそうでなければ説明できない。

それにしてもこんな軽い作品なのに仙元誠三の撮影が素晴らしくてかえって違和感が、特に夜の都会のネオンに彩られた街並みを捉えた映像の美しさは相変わらずで「何でカメラマンはこんなに頑張っているんだ?」とちょっと気の毒に。

特に説明もなく同じ場面で突然服を着替えている演出も気持ち悪い。

鈴木保奈美、財前直見、武田久美子、鈴木京香と出てくる女優は豪華なんだけれど今一つ美人に見えないのもマイナス。
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