ぽん

ブルックリンのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

ブルックリン(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

こういう風に「普通の人の普通の人生」を肯定してくれる物語が好きだ。脚本がニック・ホーンビィだけあって手堅い。

田舎から出てきた地味な女の子が異国の都会暮らしですっかり洗練され。そんな彼女にゾッコンの男子も現れグイグイ押されて恋人関係に。そんなとき身内の訃報が飛び込み帰国しなければならなくなるヒロイン。
彼女を愛する気持ちだけは誰にも負けないけど、その他の点ではどうかなぁって感じの将来が見えそで見えないイタリア系移民の彼氏を置いて出立する訳ですが。彼氏の方はそんな自分の立場をよく分かってて不安なもんだから、彼女が行ってしまう前に強引にプロポーズして結婚の既成事実を作ってしまう。
故郷に戻ったヒロインは出国前には相手にもされなかった金持ちのボンに擦り寄られ、悪い気はしないので誘われるままデートしたり自宅に招かれたり。結婚していることは親にも内緒なので、さぁこれから私はどうすればよいの~?という、ちょっと打算的なヒロインにリアルな女子の生態が見てとれて実に面白かった。

これ、純愛なんかじゃないところが良いです。汚れた大人の自分にはその方がキュンとくる。
ニック・ホーンビィはこういう、ちょっとダメなところもある市井の人々をそれ以上でもそれ以下でもないフラットな目線で描いてくれるので大変好感が持てる。(ただし本作には原作があるようなので、どこからが脚色か分からない)

ヒロインの決断は確固とした自分の強い意思によるのではなく、その場その場の状況で目の前にある選択肢の中から押し出されるようにして掴んだもの。ああ、そうだよね、多くの人はこうやって偶然や妥協や惰性なんかもありながら生きていくよね、それでいいんだよねってフッと心が軽くなった。みんながみんな、真っ直ぐに大きな夢に向かって努力して成功するって訳じゃない。
良いではないですか、それで。
ぽん

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