アイルランドから異国の地アメリカ(ブルックリン)へ
期待と不安を抱えながら乗船する主人公(シアーシャ・ローナン)
1950年代の船旅それも女性一人
今とは違い直ぐには戻れない程の距離に彼女の不安感は計り知れず
母と姉を残しての旅立ちにも関わらず
見送りの母は出港前早々に帰ってしまう最悪の別れに…
押し潰されそうにもなるだろう…
日本でも進学や就職等により親元を離れ
他府県へ引っ越した経験のある人には夢や希望だけでは処理できない
非常に刺さる部分があると思え
また街で暮らした後に故郷に帰った時のあの感覚は
多くの人が少しは感じた事があるのではないでしょうか…
詩人 中原中也の「帰郷」のように…
渡米後の彼女は恋に仕事に勉学に邁進し
まるで幼虫がアゲハ蝶に変化するかの如く綺麗に成長してゆく姿は
衣装デザイン・色彩の変化もあるが
徐々に輝きだす表情の変化はとても魅力的であった
また姉や母との家族愛と
家族を取るか自分の人生を取るかとの葛藤も丁寧に描かれ
あの年頃特有の責任感の曖昧さも共感でき
籍を入れていなかったら違う結末になっていたかもとの想像も膨らんだ…
衣装は勿論のこと車やバス
インテリアから町並み等の時代感の再現性も「キャロル」等に匹敵し
全く違和感無く物語に没頭出来る素晴らしいこだわりを感じた