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ブルックリンのdesperadoiのレビュー・感想・評価

ブルックリン(2015年製作の映画)
3.5
何より心理描写が丁寧かつ細やかで、映画のキャラクターとは生まれた時代も場所も全く異なるこちらの心にすっと染み入る。それもセリフだけではなく、ちょっとした仕草や表情の変化等で彼女らの思考・感情を読み取ることのできるところが素晴らしい。もちろんそれは役者の演技の賜物だが、的確な編集やカメラワークの力も大きいだろう。特に幾度か描かれるダンスのシーンはその都度アプローチが異なり、演出の工夫がよく分かる。

とは言え不満な点もいくつかある。まず映像の平板さ。昼間の屋外でのシーンはその傾向が顕著。ジョン・クローリーの新作『The Goldfinch』ではロジャー・ディーキンスが撮影監督を務めているので、その辺りの心配は無さそう。
もう1つは原作と違うラストシーンについて。船でのやり取りは円環が閉じるようで巧いと思うが、その後は完全に蛇足ではないか。映画らしく分かりやすいハッピーエンドにしたくなる理由も分かる。しかしあれ程結末をはっきりとは描かず、観客の想像に任した方が鑑賞後の余韻もより深まるはず。
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