かえで

ピンクとグレーのかえでのネタバレレビュー・内容・結末

ピンクとグレー(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

何を言ってもネタバレになってしまいそうなので、こうなったらとことんネタバレ感想を。

映画が終わったあとの、虚無感とか脱力感のような、ぼーっとなってしまう感覚は「桐島、〜」を観た時と似ている。ストーリーはまるでかけ離れているのだけど、登場人物の何者でもない空っぽ感や核となる出来事の真相が結局曖昧なままであるところが類似しているのかなあと思ったり。

62分後以降の物語は、どんどん堕ちていく大貴の姿が痛々しく、前半部分の世界が現実であれば良かったのに…と思ってしまうくらい。どん底の世界で、成瀬たちが放つ言葉がずしりと重かった。白木蓮吾とは何者だったのか、彼の中の自分の存在とは何だったのか、自分とは一体何者なのか、答えはどこにあるのか…。このあたりのテーマは青春映画にありがちではあるのだけど、本作の大がかりな仕掛けによって飽きることなく観ていられる。結局のところ、現実世界も劇中世界のように掴みどころのない、うわべだけの空っぽの世界なのかもしれない。物事の真相や他人のこと、そして自分自身のことでさえも理解し尽くすことなんてできない。そんな世界で生きてゆくのかどうか、ただそれだけ。白木蓮吾は死を選び、河田大貴はこれからもきっと生き続けてゆくという、たったそれだけ。

ごっちとりばちゃんの物語は、りばちゃんがりばちゃんの視点で描いた作品の映像化であり、私たちは本当の二人の物語を知ることはできない。ごっちの死の真相も、あくまでごっちの幻影が語ったもので本当のところどうなのかは分からない。しかしこの作品の主題は真実を突き止めることではなくて、むしろその逆で、だから「分からない」というのがこの作品の正しい楽しみ方であるのだと思う。


中島裕翔くん、ドラマ等で拝見して良い役者さんだなあと思っていたのですが、本作で一皮も二皮も剥けた感じがしました。スクリーン映えもするし、また今後も映画で姿を見られるといいな。
そして菅田将暉くん、改めてその演技の凄さを実感。後半の憎たらしすぎるヒール役ももちろん、前半のピュアでちょっといけてないような思春期男子役も本当に上手い。劇中劇なんだったら何もあそこまで本気でやらなくて良かったんじゃないの!?と思ってしまうくらい(笑) 中島裕翔くんとの仲睦まじさも映画からひしひし伝わってきて、また是非何かで二人が共演してくれたらなあと思います。
夏帆ちゃんの演技の振れ幅もすごいし、柳楽優弥の存在感はさすが。映画の構造の斬新さはもちろんですが、それが成り立つのは役者陣の演技があってこそ。映画を支える若い世代のエネルギーに圧倒されました。
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