kkkのk太郎

ゴースト・イン・ザ・シェルのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

全身を義体化した女サイボーグ、草薙素子の活躍と選択を描いたSFアクションアニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の実写リメイク版。

サイバネティックス技術が飛躍的に進んだ近未来。対テロ組織「公安9課」に所属するミラ・キリアンは、クゼと名乗るテロリストを追跡していくなかで、自らの出自にも関わるある大いなる陰謀を知ることとなる…。

主人公、ミラ・キリアン少佐を演じるのは「MCU」シリーズや『SING/シング』の、名優スカーレット・ヨハンソン。
ミラに義体化手術を施した科学者、オウレイ博士を演じるのは『ショコラ』『GODZILLA ゴジラ』の、レジェンド女優ジュリエット・ビノシュ。
公安9課の指揮官、荒巻大輔を演じるのは『バトル・ロワイヤル』シリーズや『アウトレイジ』シリーズの、世界的な映画監督としても知られる北野武(ビートたけし)。

原作は1989年から1991年にかけて連載されていた士郎正宗の漫画「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」。とはいえ、本作の下敷きになっているのはあくまでも1995年の劇場アニメ版。原作と劇場版は素子の性格が180度違うので、物語の手触りが全く異なる。本作を観てこのシリーズに興味を持った人がいれば、是非両方とも手に取って確認して欲しい。その違いに驚きますよ!

『攻殻機動隊』というシリーズはとにかく息が長く、誕生から30年以上経っているにも拘らずいまだに新作が発表され続けている。
あらゆる媒体に派生しており、はっきりいってその全貌を掴むことは不可能。映像作品だけでも色々あって、しかもどれもこれもタイトルが長ったらしくてややこしいのでもうわけわかめ。攻殻の海は広大なのだ。

ただ、その中でも特に重要な作品がいくつかある。1995年の劇場版と、その続編である『イノセンス』(2004)。そして「S.A.C.」と呼ばれるテレビシリーズ(シリアルが2本、長編が1本)がそれにあたる。
本作は1995年版をベースにしているが、これら重要作品からの影響も強い。例えばクゼというキャラクターはS.A.C.の主要キャラクターだし、バトーの愛犬家という設定やゲイシャロボが命乞いをするシーンなどは『イノセンス』からのリファレンス。また、エンディングで流れるよいにけり〜という珍妙な曲は『イノセンス』のテーマソングである。
事程左様に、本作は1995年版をそのまんまリメイクしたのではなく、シリーズの諸要素をミックスしたベストアルバムのような作りになっている。この点については賛否分かれるところだろうが、新しいものを作りだそうという心意気は買いたい。

本作の製作総指揮に名を連ねているのは、『攻殻機動隊』シリーズのプロデューサーでもあるアニメ会社Production I.Gの会長、石川光久。
彼が参加しているからか、それとも製作陣に猛烈なオシイストがいるのかはわからないが、本作にはとにかく押井守監督へのラブが詰まっている。
バトーの愛犬がちゃんと押井が偏愛しているバセット・ハウンドという犬種だったし、素子の住んでいたアパートの名前は押井守監督作品『アヴァロン』(2001)から拝借されている。半ば廃墟となった都市の撮り方や影になった飛行機を下から映すカットなどはいかにも押井的。これってもしかして『攻殻機動隊』の実写化なんじゃなくて押井守の実写化なんじゃないか?
という訳で、名作の実写化ということでなんとなく観ることを躊躇しているオシイストにも一度鑑賞してもらいたい作品である。

長々と前置きをしてきましたが、本作の感想としてはぜんぜん悪くなかった!
…まぁ特別良いというわけでもないんだけど、少なくともそんなに大バッシングを受けるほど酷くはないです。このくらいのクオリティなら全然アリ♪

押井守が監督した劇場版2作が持っていた哲学的な問いかけや文芸的な雰囲気はほとんどオミットされている。なんとなく上部だけではそれっぽいことをやっているけど。
興味深いのは、アニメ版にあったクゼの思想や素子が抱える空虚感のようなものをバコッと排除し、その代わりに復讐という単純な動機や母と娘の絆という家族要素をぶっ込んでいること。手触りはハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(2014)とよく似ている。
小難しいことはイヤ!親子のストーリーが一番大事!ハッピーエンド最高!!というのがハリウッドメソッドなのだろう。こういう日本映画のハリウッドリメイクを観ると日米の意識の差というか、映画に対する考え方の違いみたいなものがなんとなく見えてきて面白いっすよね。

本作には、割とカルト映画としての魅力が詰まっているように思う。
押井守っぽい雰囲気を、スカーレット・ヨハンソンを主役で、脇役にはあのビートたけしが出演、さらには桃井かおりまで登場!なんじゃこのカオスは!!?
映画なんてのはヘンテコであればヘンテコであるほど良い、というのが私の持論。そういう意味で言えば本作のヘンテコ具合はリメイク元の比じゃない。サイバーパンクな雰囲気が急にヤクザ映画になっちゃうんだから。ファッキンサイボーグぐらいわかるよバカヤロー💥💥🔫

アジアとロサンゼルスが合体したかのようなイカれた街並みやサイボーグの存在など、完全に『ブレードランナー』(1982)のパスティーシュである本作。
アジア系移民の増加に伴う街並みの変化を予測し、圧倒的なリアリティをもってその世界を具現化してみせた『ブレラン』に対し、本作は「こんなんサイバーパンクっぽいっしょ?」とテキトーな感じで世界観を作りあげていったのが見え見えの安っぽさ。なんじゃその巨大なホログラム!?

こんなアホらしい街並みを見させられるとそれだけで鑑賞意欲が減退してしまうものなのだが、本作はそれ以前になんかもうカオスな雰囲気が漂っているので、このアホアホシティ具合がむしろ作品にマッチしているように思う。
真面目に観るのもアホらしくなるが、そもそも真面目に観る映画じゃない。ヘンテコだなアハハッ!🤣くらいの鷹揚な気持ちで鑑賞するのが正しい見方なのです!!なのでこれでOKなんです!!…多分。
ヤクザが経営するバーに書いてあった「カクテル 高めろ」という謎のキャッチコピーは脱力感があって良いですね。

それでも一つ気になったのは、一体この物語はどこの国のお話なのかということ。『ブレラン』っぽいし英語喋ってるし、やっぱりアメリカなのかな?と思っていると、たけしは思いっきり日本語喋ってる。さらに、国の首長はどうやら総理大臣のようだ。ってことはここ日本?いや流石にそれはないだろ…。
原作は普通に日本が舞台なのに、それを無理やりアメリカあたりの国に変更してしまったせいで設定に齟齬が生じている。アメリカに舞台を置き換えるのなら、その辺りの設定の変更は丁寧にやって欲しい。

あとはやっぱり素子=スカヨハというのがなんだかイメージと違う。顔は確かに素子っぽいんだけど、彼女は意外と体型が小柄でむっちりしてるんですよね。白いタイツを着るとそれが余計に目立ってしまう。
せめてエミリー・ブラントとかアン・ハサウェイくらいの身長は欲しかったところ。こんなんオリジナルを知らない観客からしたらどうでもいいことかも知れないけどね。

スカヨハがたけし軍団入りするという世にも奇妙な物語。変な映画を観たいという欲は満たされたので、その点には非常に満足してます!
もし次回作かあるのなら、あの問題のシーン”ナメクジの交尾”を映像化して欲しいものです…😏

そうそう。本作は是非日本語吹き替えで観て欲しい!田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、小山力也といったオリジナルキャストが揃い踏み!しかもみんな吹き替えでも活躍している実力派なのでとにかくクオリティが高い!
芸能人声優やアニメ声優が跋扈する近年の洋画界で、この吹き替え版の出来は最高峰と言って良い!たけしだけ日本語喋ってるという問題点もカバー出来てるし、ほんとに言うことないッ👍
吹き替えを馬鹿にする狭量なヤツ、この映画を観てその認識を改めるべし!!

※初めてTELASAを使って映画を観てみたんだけど、めっちゃ画質が悪かった🌀
これはウチのネット回線に問題があったのかな?Netflixは普通に観れるんだけど…。
kkkのk太郎

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