高橋早苗

ゴースト・イン・ザ・シェルの高橋早苗のレビュー・感想・評価

3.9
…公開前には、少佐がなぜ日本人じゃないのか?という話も聞こえてきたけど、アジア人の華奢な体躯よりはよっぽど「らしい」んじゃないかな。

それと、私はスカーレット・ヨハンソンの声が好き。だから、まず本人の声で観たかった

何より、監督はじめ製作側の
リスペクトしてます!感が見えた。
吹替版は、聞き慣れた少佐やバトーの声、スクリーンは違う顔、の
どこかしっくりこない感を面白がりつつ観たわ^_^

…義体が、脳に馴染むまでの
違和感みたいなものかしら?


ストーリーはアメリカンというか、少佐の出自を明らかにしないと気が済まないのかな?ハリウッドは。と感じたねぇ


アニメ映画とTVシリーズの中で
私が観ていた「少佐」は

自分が何者か、という
誰もが抱く問いを
ひとまず脇に置いているヒト

…その問い、よりも
目の前の事件を取ろうとするヒト
というイメージで。


シェル(義体)に覆われた脳は
わずかな記憶と
ゴーストの囁きを頼りに突き進む

そうすることが
彼女を彼女たらしめていて
彼女が「事件を取る」とはそういうこと
…ネットの海を泳ぐシェルには
問うほどの「個」なんてない、位に思っているかも。とね


だから、今作は
少佐はクゼという男を追いながら
自分が誰なのかを追っていく
自分という存在の心許なさがよく出ていて、それはよかったんだけどー

…その心許なさが
弱さに感じられちゃって

あれ?少佐って
こんな弱かったっけ?みたいな
(もちろん義体だし
全然弱くないんだけど^_^)


結果的に
自分の生い立ちを追うことになった少佐には
やっぱ弱さを見てとってしまう
…ニセの記憶を植え付けられた、なんてSFじゃよくある話でしょ?


生い立ちなど分からなくても
事件を取る、取り続けることで
シェルに覆われた自己の存在証明をしていくのが
少佐だと感じていたので

スカヨハ版少佐には
弱さを感じた分だけ

ラストでやっと
事件を取る(取れる)少佐になった、というのかな

《少佐が「少佐」になるまで》のお話に観えました


もうひとり、攻殻といえば
公安9課長 荒巻


ものすごーく個人的な正義の人
という印象で。
宮仕えであることには変わらない
(公安ですからね^_^)
その中でも、“宮”の都合とかよりも、あの頭の中で描いている
個人的な正義を貫こうとする強い人
のイメージ。


事件解決のためには
何ものも、己さえ挟まない
・・・解決というより、いつも
決着をつけている人というのかな


で、この実写版
荒巻の位置がよくわかんなくって
少佐との関係もよくわかんなくって
ん?んん?となっていたw


「総理と会ってきた」なんて言ってるので
部隊としても総理の直下なのかな?とは思わせるけど


少佐が出自を探し始めた分だけ
記憶操作された全身義体の
自分探しストーリーが前面に出た分だけ

9課長荒巻の存在が薄れちゃった印象。


ただひとつ、よくわかったのは
「狐を狩るのに兎をよこすな」
…このセリフを聞いた時に
あ、これは“たけし荒巻”。そう認識して
やっと入り込めました^_^


9課長、荒巻大輔ならば
こんなセリフは言わんだろ。
つか黙って追撃をかわすでしょ。
つか、追撃を受ける始末には持っていかないでしょうしね。

珍しく?感情を吐露しているようで面白かったわ^_^

…猿でも狸でもなく狐。
初めは「ん?」と感じたけど
なかなか言い得て妙^_^


原作に、アニメに
思い入れのある人ほど、オススメしないけど
これ単独で楽しむ、はアリかな。
高橋早苗

高橋早苗