すず

マイ・プレシャス・リストのすずのレビュー・感想・評価

マイ・プレシャス・リスト(2016年製作の映画)
3.5
IQ185の才女 キャリーは、14歳でハーバード大学に飛び級で入学して、卒業後にひきこもりになった。一体なにが。週17冊の常人離れした読書に勤しみ、まともな話し相手は父親の友人のセラピストのペトロフだけ。

ペトロフは彼女に提案する。感謝祭から大晦日までの1ヶ月間で、(死ぬまでにしたいことリストならぬ)〝私が幸せになるためのリスト〟を消化してご覧なさいと。ああ言えばこう言う、頭脳明晰、屁理屈屋のキャリーに対して、「私の不能さを証明するつもりで実践してみなさいよ」と巧妙なペトロフ。半信半疑ながら渋々と従うキャリーはペトロフ監修の6つのリスト達成にいざ挑む。

賢すぎて、ちょっと風変わりな女の子を実に愛らしく描いていた。大人びた物言いでも、キャリーはまだ瑞々しい19歳。14歳なんて頃から〝大人社会〟(まあ、14歳から見たらという意味で)に放り込まれて、対等に渡り合おうと背伸びもしたはずだ。いくら知性に溢れていても、年相応の経験値は、座学では埋められないもの。「飛行機に乗らずには、飛行機に乗った感覚は説得力をもって語れない」というわけだ。

ときに、大人は「君は大人びているね」なんて言って近寄ってくる。でも、都合が悪くなると「君は子供だ」なんて見下した言葉で片付ける。アイデンティティにヒビが入った。コンプレックスを感じた。大人はズルくて、嘘つき、人間関係なんてくだらない。

「屈辱感や不道徳を嫌う私は堅物?」

これは色々と〝飛び級〟しすぎてしまった彼女に、何気ない 等身大の経験を通して、もう一度ピュアなハートをよみがえらせるというハートウォーミングな物語。

ちょっと〝変な子〟キャリー•ピルビーの、生真面目でど正論な思考と、機知に富んだ言葉選びで、価値観の違う人々と関係していく姿がオモシロ可笑しくてつい笑えるし、元気な若々しさが可愛らしい。そして6つのリストを通して、幸せになるためのヒントを見つけ出していく姿がとても愛らしかった。


「キャリー、君のミドルネームはなに?」
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