「俺を笑わせたら大したもんですよ。」san州力
なにこれ、めちゃ面白いじゃん。
僕は、普段から感情というものが基本死んでいる人間なので、怒る事はまず皆無であり、映画などで泣く事は稀にあっても(「はじめてのおつかい」だけは涙腺ごと流れ落ちるレベルで号泣します)、笑う事に関しては本当に細胞が死滅してるのかというくらい感情が仕事をしないのである。
(は?根暗じゃねえし、は?)
それこそ、笑うなんて喜怒哀楽の中で最も汎用性が高い筈であり、なんなら喜と楽ってほぼ一緒やろとも思うのだが、これらが上手く機能しないと日常生活では中々に不便な事が多い。
例えば、相手がなにか面白い事を言ったり些細な優しさを向けてくれても、僕の琴線にはピクリとも反応しない為、その場を繕うために作り笑いでお茶を濁したりしてしまいがちなのだが、今度はそんな事をしてる自分自身に白けてしまい更に感情が冷めていってしまうし、そもそもリアクションがそんなに上手くないから、上辺だけでやってるのがバレバレで場の空気もなんか変な感じにさせてしまったりするのだ。
しかも、そんな感じで相手の言動になにかとシビアなので、自分の発言にはもっと厳しくなってしまい、無理にウィットに富んだ事を言おうとするあまり、空回りしてしまったりもする。
面白いとか嬉しいの幅が狭いって、想像より遥かに生きづらいのよ。
そう思うと、容姿端麗な人よりも感情豊かな人の方が、どちらかというと人生勝ち組だよね。
と、そんな人生拗らせ中の僕が、今作には久々に声を出して笑ってしまった。
これ、公開当時ってちゃんと宣伝とかされてたっけ?というくらい、全く存在を知らなかった作品なのだが、昨年末に地上波で放送されていた番組をたまたま録画しており、今回はそれを気まぐれに観てみたらこれがかなりの大当たり。
まず、出演陣とその配役が明らかにバグっててヤバい。
「ジュード・ロウ」と「ジェイソン・ステイサム」が完全なる脇役で「50セント」までおまけみたいに付いてくる映画ってなんだよ。
しかも、そのビッグネームを押しのけて主役を張ってるのが「メリッサ・マッカーシー」で、劇中いわく「子豚のダースベイダー」みたいな見た目のおばさんがスパイアクションをやってる時点でこの作品は既に勝ち確なのだが、更に今作はおばさんキャラのデフォルメが非常に秀逸であり、パニクるおばさんの面白さって万国共通なんだなってくらい、日本人の感性にも十分マッチしているのはかなり凄いところ。
その上で、おばさんっぽくないイキリキャラを演じさせたと思えば、ふとした瞬間に素に戻らせてみたりと、そのタイミングやバランス、ギャップの使い分けもかなり上手い。
また、脇を固めるキャラも全員が中々のゆるキャラ具合で、ジェイソン・ステイサムなんかはいつもの二枚目キャラを封印したポンコツエージェント役で、本来得意とする肉弾戦が今作ではほとんどなりを潜めてるし、それよりももっと目立ってるのが「ミランダ・ハート」というノッポなおばさんだしで、もうなにがなんだか色々とめちゃくちゃである。笑
そんな中で特に好きだったのが「ピーター・セラフィノウィッツ」が演じるセクハラまみれのエージェントで、フレンチキスの流れでディープキスまでしようと舌をレロレロさせてきたりと、セクハラキャラに対する役作りが最高に面白かった。
結構人が死ぬような過激な描写があったり、ところどころでは見応えのあるアクションがあったりと、スパイ映画の側面も案外しっかり作り込まれてる印象なのに、登場するキャラクターの個性にステータスを全振りしたようなおふざけ感がもう濃すぎで大好物すぎた。
僕が今作の存在を知らなかった分、掘り出し物を見つけたような高揚感も相まっているのだろうが、久々に素直に心から面白かったと思える一本だった。
それにしても、死体にゲロぶっかけたらアカンよ…。