スギノイチ

看護婦のオヤジがんばるのスギノイチのレビュー・感想・評価

看護婦のオヤジがんばる(1980年製作の映画)
3.5
「看護婦のオヤジ」とは「前田吟が看護婦をやる」という意味ではなく、佐藤オリエ演じる看護婦の夫、という意味だ。
妊娠中だろうと子育て中だろうと夜勤15日を強いられる昭和の看護婦。
結婚後も労働環境は全く変わらず、流産や離婚が常態化していた時代。

タイトルに反し、頑張っているのは前田吟より佐藤オリエだが、それがポイントなのだろう。
イクメンなんて言葉はない時代。
前田吟演じる主人公は在宅の版画家なので、かろうじて家事・育児をしながら妻を支える事が可能だが、当時はそうじゃない家庭の方が圧倒的に多かっただろうし、それでなくても佐藤オリエは過労死寸前まで追い込まれてしまう。
本編で提起される問題は今も地続きだ。
初主演が『ドレイ工場』だった前田吟を主演にしているのも腑に落ちる。

最近観た『典子は、今』や『遠い一本の道』もそうだったが、この手の映画では、社会派映画であると同時に地方の風景を美しく活写してる事も多い。
本作でも前田吟の語りで青森県八戸市の農村生活が回想されるが、ここが特に素晴らしい。
そして、こういう風景には前田吟とか井川比佐志がよく似合う。
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