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みかんの丘のunepistのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
4.0
90年代アブハジア紛争の頃のジョージア(グルジア)に住むエストニア移民の老人イヴォが、負傷した敵同士の2人の兵士を助け、家の中では殺し合わないとのルールの基に共同生活を始める、、、というプロットで戦争の悲哀や無意味さを描いたヒューマンドラマ。
敵兵同士の交流を描いた作品は多くありますが、本作のテーマは「敵味方を越えた友情」という表層的な部分でなく、国家や民族としての和平は難しいが、人間同士として向き合った時にその壁は越えられるのか?越えられるのであれば戦争とは何だ?という問いかけがあるのでないかと思いました。とはいえ説教臭い話ではなく、中立なエストニア移民の視線を通して描くことで、そのあたりを上手に脚本に落としています。
今回は蘊蓄を少し。アブハジア紛争はジョージアが旧ソ連からの独立を目指す過程で、アブハジア自治共和国の完全併合を狙ったことに端を発する紛争。当時のコーカサス地域は民族独立の機運が高まっており、ジョージアに反発した多くの義勇兵がアブハジア側で戦いました。チェチェン人の傭兵であるアハメドがジョージア人を憎む理由や、味方のロシア人にも敵意を持つ理由はそこにあります。この数年後にチェチェン独立の紛争が起こり、ロシアと共にアブハジアを助けたチェチェン人はロシアとの長い戦いに身を投じる事になります。そして、アブハジア紛争は20年近く前に停戦したものの、いまだに解決することなく続いています。
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