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ガールフッドのyuumのレビュー・感想・評価

ガールフッド(2014年製作の映画)
2.6
非知性的な暴力主義者という黒人移民のステレオタイプを強化させる描き方に違和感を感じながら完走したけど、監督が裕福なイタリア系の白人女性(『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ)だと知って納得した。

主人公とその仲間の女の子たち、個々の出身国の深いルーツに触れることなく「アフリカン・フレンチ」という雑な括りの属性のまま話が始まった時点でえ?と違和感を感じ英仏のWikipediaを確認したがそこでも出身国の記載はなかった。
例えばこれがアフリカ系ではなく見た目の似ている東アジア系の日本人と韓国人と中国人の女の子達「アジア系」の物語だったとしても、お互いの文化について一切触れずにコミュニケーションを取るはずがない。別段意識せずとも会話の彼処に「日本ではこう」「中国、韓国ではどうなの?」と文化的差異や共通点を自然な流れで確かめ合うセリフが本来ならあってもおかしくないと思うのだが、この映画には不自然なくらい一切出てこない。あくまで「〇〇系移民」という非常に乱暴なグループ分けによってキャラクターが埋没化されてしまっている。仮にこの映画に登場する大勢の黒人の少年少女達が奇跡的に全員同じ国出身、あるいは移民2世等だったとしても、登場人物全員が自分のルーツを一度も意識したことのないということはかなり想像し難い。シアマ監督は「アフリカ系」であれば全部一緒くたにして良いと判断したのだろうか。

他文化圏のファンタジー創作自体が悪では無いと思うけど、黒人の少女たちが白人監督が考えたイマジナリー・アフリカ系移民として負のスパイラルから逃れられないマイノリティと言う漂白化されてしまうのは些か抵抗があった。恐らくシアマ監督にとってVicやLady達は完全に想像上の他者でファンタジーであるが故に、移民のリアルを描く話であるはずなのにリアリティに欠けていて鼻白んでしまう。当事者であるアフリカ圏の国出身の監督が撮るフランス移民の話を観たいと思った。
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