ジャンキーの意見

EDEN/エデンのジャンキーの意見のレビュー・感想・評価

EDEN/エデン(2014年製作の映画)
3.5
好きな曲がたくさんかかっているからいい映画、ということには必ずしもならなくて、物語が音楽に負けちゃってる。音楽的に興奮はしたけど、映画的な魅力は乏しい。ミュージカル的な高揚感を求めていたつもりもないけれど、それにしたって全編音楽オタクの戯言みたいなもので、物語と音楽が有機的に絡まない。過度にロマン化しないところがいいとは思うし、起承転結をしっかりつけて上手にまとめるということではなく、そのひとの歩んだ20年間を単純に切り取る、というやりかたがフランス映画”らしさ”でもあるのだろうけど。
それにしてもこの物語は、ぼくのようにスターにはなれないそこそこのDJしてはとても近しいものではある。レイヴ・カルチャーにヤラれて、DJをはじめて、それなりに活動をして、でも遊びすぎたツケがきて、なんとなく落ち着いて堅実な人生を選択する、というような。一握りのトップDJの影にはこういう人の人生がたくさんあるだろうし、ぼくとて似たようなものだしとても共感する。詩の引用で唐突に終わるようでもあるけれどそれは単に映画を終えるための方便であるだろうし、この映画が終わったとしても売れなくなったDJの人生が終わったわけではないし、アンハッピーエンドであるということもできない。「グッバイ・ファーストラブ」でも「あの夏の子供たち」でもその先の物語/人生というのには当然のことながら続きがあって、もちろんどんな映画をみてもその続きは想起させられるものなのだけど、続きがあるということをより多く予感させより大きな余韻を感じさせてくれるのが実はこの監督の作家性でもあるのだろうし、時にそういう作風は退屈さを感じさせもするけれども、今作でこのようにクラブ・カルチャーを題材にとったことはその作家性となんら矛盾することではなく、90年代のノスタルジーに浸るというよりはその時代のあの文化が教えてくれたことを記憶しながら生きるということへの希望を提示してくれているのだ。それはクラブ・カルチャーだったからよりいっそうそうなのだ。だからこそ映画的にうまくいっていないところが残念でならないし、冗長さや退屈さを含めてたとえばロメールの映画がそれでも傑作と呼びうるような例はあるけれど、そのような域には達することはできなかった。