JIZE

ラン・オールナイトのJIZEのレビュー・感想・評価

ラン・オールナイト(2015年製作の映画)
4.0
"N.Y.中が敵⁉︎"...まず逃亡劇に渡る"悪夢的クラクラ感最高! ! ! !"というが率直な印象。歩幅を進める毎に揺れる画面配置のグラグラ感や進んでは戻り進んでは戻りと抑揚気味に配される物語起伏,カーチェイスやハイスピーディに流れるライド的な面白味...とにかく最高。物語構築力や伏線回収,カメラワークによるNYロケーション映え等を差し置き考察しても悪夢感or不安定感はやはり安定的な快感として物語同様に追尾し期待を裏切りませんでした。
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お話自体はリーアムニーソン演じる殺し屋ジミーと息子マイクがマフィアや警察,殺し屋,一般市民等,ほぼ全N.Y.中から包囲網を敷かれ徹底的に死と隣り合わせな逃亡劇を血や汗を散々垂らし苦悩しつつ奇襲を回避し逃亡を図るという絶望的な状況下で展開される発砲事件をベースにしたお話。猜疑心恐怖モノ好きの私としてもジミーの不眠症設定は現実と虚偽の境目を惑わせ彼自体の存在(意識)が観客側に対しても善悪を狂わせ混乱させる分,主人公=暗殺者な点からも深刻的な危うさは繊細に感じ取れ実感。終盤,ジミーの過去録として"ある秘密"が兄エディの口から直々に明かさ瞬時的にマイクの前で解明される場面。あの描写を踏まえればジミーの今作主人公であるが故の信用しきれない危うさや弱さ,歪みを明瞭にも認識出来ると思います。リーアムニーソンの神経症気質は近作『96時間-レクイエム-』に引き続き最高の既存設定でした。
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また,リーアムニーソン主演代表作『96時間』シリーズ3部作からの継承点でも,カーチェイス(今作ではほぼ直線的)やド派手な銃撃戦,密室(駅トイレ)で争う肉弾戦,人質(家族)救出があります。近作『フライトゲーム』でも極限的状況下や悪夢的クラクラ感,底知れぬ不穏さ,禍々しさ等です。要は,この2作品(シリーズ)の善良箇所が程良いバランスで全体的に配された為,クライムアクションorサスペンスの天秤が平等に調整され満足の域だった。

ジャウムコレット=セラ監督との共演もリーアムニーソンは3度目であり,1作目『アンノウン(2011)』2作目『フライトゲーム(2014)』3作目『ランオールナイト(2015)』とフェーズを踏む毎に進化の域は飛躍し第2フェーズ(第4作)に繋がる野心的な作品としても今作は徹底的に磨き上げられた秀作として間違いない出来栄えに思います。
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殺し屋(マフィア)という闇世界を背景にダークサイド全開で物語は幕を開け敵側からの奇襲により疾走し加速し続け衝撃の顛末を感動と共に迎える。今作は"感動"という箇所が重要点ですね。鑑賞前から事前的に知り得た知識で"全編クライマックスの連続!!"という呼び声も多数ありました,が鑑賞後振り返り考え直せば...クライマックスは大きく分類し2箇所!!ですね。だって,NY市地下鉄やカーチェイス,リンデンプラザアパートは決してクライマックスの出来栄えとは言い難いでしょう。パブ『アビー』の終盤展開をクライマックスに含めるかで悩みましたが..含めません!!あれは最終決着に繋がる宣戦布告な為。最後の大クライマックス描写は一言たりとも他言出来ませんが性急過ぎた為,最高に驚かされ感動する事は間違いなし!!だと思います。
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上記では色々述べましたが,マイクやショーンとの友情絆物語やクライム逃亡劇の全貌等,勿論面白味として十分豊富です,が結論を述べると...要は,ジミー自身が殺し屋として数々の残虐行為を遂行してきた閉ざされた過去に対し悪しき運命(己)と向き合えず現実逃避気味にも己自身から逃亡を図る一方で,マイクとの愛ある繋がりを通じ過去の誤ちを悔い改め改心する闇世界からの脱却or逃亡。言わば"現状かつ心情の対極さ"だと着地し結論付けました。双方のバランスが状況を追う毎に変化を帯び逃亡劇と言う"逃げる"行為に対し意味合いが変化し正と誤の認識が違いを帯びる。マフィアから追われ"逃げる"行為と闇世界から脱却する為に自ら足を洗い"逃げる"行為。題材(逃亡劇)とも相応しい逃げる事に対し一貫性を宿す奥深き違いではないでしょうか。ジミーとマイクの親子関係を通じ成長の域を感じさせ"逃げる"から"立ち向かう"に至る変化過程が親子愛or友情を何重にも投影させ深みを感じました。
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物語でも,まず冒頭の森描写とラストの空虚感全開な円環的着地。幻影⁉︎夢⁉︎と既存的にも主人公が併せ持つ神経症的危うさはMAXだった訳ですがラストの"あの場面"に繋がる突飛な時系列の前後配置も見事でした。

全体的なカメラワークでも,NY中の俯瞰ショットから一気に対象物目掛けズームしクローズアップ気味に対象を映し出す今現在起こり得る感orリアルタイムを明確に誇示する演出も緊迫感or臨場感がズバ抜け最高でした。次世代の殺し屋プライス面でも役柄的にもう作品を盛り上げる上で完璧!!と感じたのは自分だけでしょうか。暗視ゴーグルやバターナイフ,赤外線付きサイレンサー等,同じ殺し屋であるジミーとの宿命感を魅せ精密機器のように動き回る鋭さはライバルとしても史上最大の強敵でした。ブライスに関してはかなり褒めてます。それ程彼の役回りは秀逸過ぎた。。

ハーディング刑事率いる警察側もジミーを監視し続け25年間⁉︎という執念を燃やす前にもう少し捕まえるチャンスあっただろ!ビンセント•ドノフリオさんの演技面はリアリティ表現が上手くNY市警の刑事としても納得ある役回りでした。

エドハリス演じるショーンの部下滅多刺し描写も笑いましたけどね。。制御出来ない怖さ危うさは覚えました。『一線を越える時はいつも一緒だ。。』『最後の一線を越える事になる。。』等ジミーとの電話を通じた会話場面は印象深く古くからの信頼関係の濃さが崩れ行く過程は少し切なかったです。。エドハリス自体の役柄はマフィアボスな為,比較的アクション場面は少ないのですが血眼になりジミーとマイクを狙う狂気さは演技含め素晴らしかったと思います。他も色々言いたいは沢山あるのですが文字数がトンデモない状態なので,この辺にとどめておきます。
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従い,ジャウムコレット=セラ監督と3度目の共演を果たし第4作目(フェーズ2)に繋がる野心的作品としても事前的な期待値は越えリーアムニーソン主演である自己評価最高『フライトゲーム』を凌ぐ勢いてして十分な出来栄え!!最高傑作!!!に思えました。限られた区間内で巻き起こる逃亡劇をベースに幕開けし感動巨編として着地を果たす...本当粋な作品です。リーアムニーソンの親父貫禄も作品を費やす毎に増大し頑固な親父像の典型作品としても完璧。敵側から襲撃を受け息子マイクが拳銃の引き金を引く寸前に『撃つな!!!』とジミーが止めに入る渾身の場面(2度)。己の命は省みず息子を命懸けで死守する家族愛は多幸感に包まれ素晴らしいの一言に尽きます。真夜中のNYをロケーションにクライム展開した構成も隔離感がありドーム内で逃亡劇をひた走る雰囲気は禍々しい淀んだ空気感として常顕在してました。今作,リーアムニーソンのアクション的苦味は割と抑制気味に配される為,リミット設定で加速し終焉まで突き進むハイテンポなスリリングさは間違いなく見所に感じました。最後の最後まで気を緩めずにご鑑賞すれば確実に楽しめ感動出来る作品です。スクリーンに自身を落とし込み脳内逃亡劇を図る上ではリアルタイム劇場で是非,お勧めです!!
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