みゅうちょび

シェル・コレクターのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

シェル・コレクター(2015年製作の映画)
3.1
ちょっと分かりにくい雰囲気映画だけど、リリー・フランキーありきで、なかなか良い映画だったと思う。リリー・フランキー上手いな〜って思った。声も素敵だね。

人は、視覚によって自分と周囲との境を作ったり、物への観念が固定されてしまうもの。それを変えることができると、色々変わってくる。

「エヴォリューション」的な匂いがしたので観てみたら、全く違った。

リリー・フランキー演じる盲目の貝類学者。たった1人で、小さな島に暮らし日々貝を集めては標本を作る。
人との関わりを望まない彼だが、流行の病気で右手が麻痺した女性が漂着し助ける。たまたま見つけた芋貝を彼の留守の間に彼女が触り、その猛毒で倒れているのを見つけるも、なんと彼女はそれを機に病気が治り、その後望まずも病気を治したい人々が島にやってくるようになる。

悪戯にセックスを連想させる描写が度々あるけれど、その理由がよく分からない。日本映画にありがちな思わせぶり感が邪魔をする。

テーマは、とてもハッキリしているなと思うものの、こちらもそういう思わせぶりな演出が邪魔をして、分かりにくくなってしまっているように思う。

盲目の主人公は、自分が盲目である故に、人とは異なる視点を持っている。彼は、本作では海として描かれる自然の中で倹しく生活していて、海はただただいつもそこにあり、自分の生活には欠かせない、酸素のようなものなのだろう。

彼にとって海やそこにある全ての物は、自分が望んでそこにあると言うよりも、あるがままに自分がそれらを受け入れざるを得ないのである。

彼が、「わたしの物」と言う道具も彼にとっては、そこに「ある」ことが重要で、どこか別のところに整理整頓されてしまったら、もう自分は生活できなくなってしまう。

漂着し我が物顔で彼の部屋を自分の家のように変えてしまおうとする寺島しのぶ演じる女の行動は、目が見える故にその物への所有欲があり、自分の思うように変えてしまおうとするのだ。

人は自然から多くの恵みを受けながら、自分たちが良いように変えてしまおうとする。そこでただ生きている生物も、人が入り込むことで、血を流す。

病気を治すことができた猛毒を持つ芋貝も、人の病気を治すための物として、あたかも自分たちの物のように使おうとするが、芋貝は人間のためにそこにいるのではない。実際その毒は人をも殺す毒なのだ。

この映画は、人間と自然との共存のあるべき姿はどう言うものなのか?
そして、視覚ある故の固定観念や自分と周囲の物や人との関係は、一度目を閉じて、いかに自分が物の造形なども含め視覚による固定観念に縛られて、時には勘違いして生きているのかもしれないと、もう一度考え直してみてはどうかと言っているのだろう。

確かに、人間にそういう観念があれば、自然破壊や略奪、戦争も起こらないのかもしれない。

一度目をつぶって自分の部屋で数時間でも生活してみると良いかもしれない。わたしも、やってみようかな…

色々なことを考えさせられる、良い作品だなと思うけれど、もう少し誰が見ても分かるような作品でないと、ただの「ヨガリ」映画になってしまう。

あと、寺島しのぶの演技の良さと言うのがいつもわたしには分からない…
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