ろく

ハケン家庭教師の事件手帖のろくのレビュー・感想・評価

ハケン家庭教師の事件手帖(2013年製作の映画)
3.8
城定版芥川「藪の中」であり黒沢明「羅生門」である。

と書いただけでネタバレだよねえ。なるほど確かに「性」ってのは一番相手を「誤解」するものかもしれない。

そもそも相手のことをわからないまま「相手が気にいっている」と勝手に思い行為を果たすのだからそれはあくまで自己認識であり、性の場ではそれが如実に現れてしまうよね。そこにあるのは仮想の自己でしかないんだよ(レヴィナス)。

仮想に自己と現実の自己を組み合わせて「性」を行っているわけだからそこに錯誤は生じる。それはここまで大きくないけどね。「性」の現場では多かれ少なかれ「羅生門」的なことが起きているんじゃないかと思う(これは経験則的に)。

ということをさらっと一日撮りでとってしまうんだから全く困った職人監督であるよ。これほんと。まあ城定は羅生門をしたかっただけかもしれないけどピンク映画のこんなに「性」の本質を語られるとマジ困るんですよ。観ているこっちが狼狽えてしまうからね。

城定は「性」を契機にしていろんな「まずいこと」を僕らに気付かせる。それは僕らがいつもは蓋をしてみなかったことにしていることをだ。でもその「蓋」を取り除き「蓋の中」をさらっと見せる。チープな演技、チープな映像なれどそのパンドラの匣を開けられてしまったら。

僕は見るしかないんです。

だから僕は城定ファンなんだろうな。
ろく

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