アントニオ・ロペスは、自身が秋じゅう掛かっても捉え切れなかった「マルメロの陽光」をカメラが颯爽と撮ってしまったことに何を思っただろうか。画家は映画に嫉妬するのか。庭に設えたキャンバスの中で画家が何を試みようとしていたのか、わたしたちには本当のところはわからない。画家が日々取り組んで、季節が変わるまで探し続けて、結果としてうまくいかなかったという一連の姿をただただ見つめるだけだ。しかしその過程の何と美しいこと。そしてマルメロが熟れ切って地面に落ちることの何と哀しいことか。15年後に発表されたキアロスタミとの往復書簡で、あれからしばらく経って小さな子どもたちがこの庭でお絵描きをしていた映像に救い。