わたぼう

マルメロの陽光のわたぼうのレビュー・感想・評価

マルメロの陽光(1992年製作の映画)
4.0
新作『瞳をとじて』を観る前に、どうしても今作を見なければいけなかった。

だいぶ前にこのレアDVDを手に入れてたのだけど、『瞳をとじて』の公開時に、『マルメロの陽光』も絶対リバイバル上映してくれると期待して、見ずにいたのだ…。

で、結局見たのは、『瞳をとじて』を観る前日となった。31年もの時の間隔を贅沢にも一夜で跨いでしまった。

本当に絵画のように美しい映画。様々なカットの構図が額に収めたくなるほど芸術的でうっとりする。まあ、ビクトル・エリセは全作そうなのだけど。

庭先で陽光を浴びて、育つマルメロの木。この季節のマルメロは、この時にしか描けない。しかし移り行く陽光を完璧に描くことができずに、何度も断念する画家アントニオ・ロペス。

ドキュメンタリーでありつつ、ビクトル・エリセ自身のことも彷彿させる…。熟していつかは枯れ落ちるマルメロの実、人間の人生も同じだが、枯れ落ちるその時間も美しい。

レストアされてないDVDで見たけど、フィルムのグレインが残っており、これはこれで味わい深かった。4KリマスターのBDはきれいで嬉しいけど、それ以前のDVDもやはり貴重で取っておくべきだなあと思う。(どんどん増える)
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