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あした晴れるかのakrutmのレビュー・感想・評価

あした晴れるか(1960年製作の映画)
4.0
フィルム会社から仕事を依頼された若手カメラマンが、アシスタントの宣伝部員やバーのホステスたちと繰り広げる出来事を、テンポの良いスクリューボール・コメディとして描いた、中平康監督のコメディ映画。

石原裕次郎の作品でここまでのコメディはないだけに貴重であり、中平康監督ならではの軽快な出来となっている。裕次郎作品という枠で考えなくても、邦画でこれだけのコメディ劇はなかなかないだろう。そういう意味では、見ておいて損はない映画である。主演の石原裕次郎と芦川いづみの演技が早いテンポについていけずに不自然になってしまう箇所があるのは難点だが、全ての登場人物が絡み合っていくストーリー展開や、徹底的なコメディタッチの映像は素晴らしい。もちろんコメディだけではなく、裕次郎のアクションシーンもあるなど、娯楽映画としての完成度は高い。個人的には、バーのホステスを演じた中原早苗の演技が本作のMVPだと思う。芦川いづみと言い争うシーンなんかは見どころであるし、ラストシーンに至る展開もグッド。

中平康ほど、芦川いづみの隠れた魅力を上手く引き出す監督はいないだろう。清純ではあるが好奇心旺盛で男性にも積極的な女子大生を演じた『あいつと私』、怪しい結婚相談所の罠にはまり娼婦的な役割をさせられるオールドミスを演じた『結婚相談』、男性を惹き付ける魅惑的な女性を演じた『誘惑』など、多くの映画で演じている役柄とは異なる人物を芦川いづみに演じさせ、それによって今まで気づかなかった彼女の新たな魅力を引き出すのである。

本作においても芦川いづみに与えられた役柄は、融通が効かないクソ真面目な(でも酒豪な)メガネをかけた才女、という普段の映画とは違う役であり、これまた貴重である。顔全体を手で覆って泣いているふりをしながら、舌をペロッと出すなどの可愛らしい仕草も良い。このような茶目っ気たっぷりの表情は『あいつと私』でも見ることができる。メガネっ娘のお決まり(今は違うかも?)と言えば、メガネをかけているときは地味で不細工だったのが、メガネを外すと美人でびっくり(本映画でもそういうシーンがある)というギャップであるが、芦川いづみはメガネをかけていてもおでこを出しても美人なので、お決まりのギャップが全然感じられないのは難点であるが。
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