あまのかぐや

天使が消えた街のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

天使が消えた街(2014年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

2007年にイタリアで起きた英国留学生殺人事件がベースとなっているそうです。逮捕されたのはルームメイトの女子学生。ふたりが若くて美貌の女学生だったこと、事件のまわりのセックスやドラッグやいかにも世間のゴシップねたになりそうな要素がそろっていたことから、事件の真相やそのものに尾鰭がつき、当時のマスコミはものすごい騒ぎになったそうです。
日本の事件報道見ても、ときどき感じますよね。被害者、加害者双方ののプリクラ画像や卒業文集が勝手にメディアに乗り、近所の人、同級生、関係者ありとあらゆるルートからプライバシーがさらされ、・・・あるときはお涙ちょうだいのドラマチックな物語に、あるときはあからさまに下世話な好奇心をもって、「いやそんなことまで?」と本人たちや家族の気持ち置いてきぼりで話題は世に喧伝されていきます。そんな事件周辺のやじうまへの疑問と、ある種の侮蔑的な気持ちを込めた監督目線(マイケルウィンターボトム監督であり、劇中の監督トーマス=ダニエルブリュール)

映画自体は、加害者と目され一審で有罪判決がでたルームメイト、ジェシカが控訴審で無罪を主張しているというあたりのお話。
控訴審を取材し、この事件に関する真のドキュメンタリー映画をつくろうとしている監督、トーマス(ダニエル・ブリュール)、取材に協力するジャーナリストシモーン(ケイト・ベッキンセール)
もうひとりバーで働く留学生、メラニー(カーラ・デルヴィーニュ)がトーマスの真相探しの旅の重要な水先案内人となってきます。

イタリアの古都、シエナの街並みと天使のような女性たち。あまりに美しいので、彼女たちはトーマスの夢世界のひとたちなのでは?という気がしてきてしまいました。愛娘、ベアトリーチェさえも。

真実と虚構の間でもてあそばれる、被害者エリザベスと加害者ジェシカ。
面白半分で扇情的なニュースであおるメディア。
離婚したばかりで、最愛の娘の親権をめぐって私生活も泥沼のトーマスの心情と重ね合わせて、観てる方もどこへ結末はどこへ向かうのか迷宮に引き込まれていきます。

映画のジャンルは「サイコサスペンス」となっていましたが、まったくかすりもしませんね。事件の核心にふれてもいないし、真犯人探しにもなっていない。「サイコサスペンス」にひかれてこの映画を手に取った我々もまた、トーマスが呆れ、突き放した下世話な世間の目なのかもしれないですね。

トーマスが、イタリアからしょっちゅうスカイプで話している愛娘「ビー=ベアトリ―チェ」の名前といい、これから作ろうとする映画にダンテの神曲のモチーフをなどど言い出すことといい、かなりこだわりがあることをみせるのですが、あいにくそのへんには不勉強で、そのあたりがわかればもうすこしトーマスの心の闇や、彼が真に求めたものへと近づけたかもしれません。

個人的には、苦悩のダニエル・ブリュールがとてもよかったので、消化不良感は忘れることとしましょ。
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