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天使が消えた街の東京キネマのレビュー・感想・評価

天使が消えた街(2014年製作の映画)
4.0
とても面白い映画でした。 それに、色々考えさせられました。 この映画、結論を言うと、誰がどうしたこうしたなんていうサスペンス的な要素はあんまり関係ないんです。 日本版予告編がミスリードしてるんで勘違いしてしまいそうですが、オリジナル英語版のトレーラーの方がそこらへんのニュアンスを正しく伝えてます。(なんでこうも日本の配給会社ってアホなんでしょう・・・)

ニュアンスとしては、『コッポラの胡蝶の夢』とか『裸のランチ』に近いかなあ。 でも、この映画はちゃんとブレイクダウンしてくれてるんで、観念的で解り辛い部分はまったくありません。 良質な詩情映画といったところです。 面白いのは、これ3本のマルチプル・ストーリーになっているんです。 事実の事件と、事実関係から見える架空の物語と、それと現実の自分の物語にね。 主人公の映画監督の周りはメディアの取材記者ばかりなので、事実だけを拾ってフェイクを作り上げようとしてるんですよ。 欧米メディアも今や朝日、毎日ばりにフェイク・メディアですからね。

で、主人公は真実なんて誰にも解らないだろう、私は私でフィクションとして映画を創ると決心するのですが、徐々に混乱してくるんです。 フィクションと現実の差ってのは一体なんなんだ、ってね。 これ多分、監督のマイケル・ウィンターボトム自身を投影しているんですね。 事実にアイデアを取るんだったら、映画には真実が必要だろうと記者たちが質問するんです。

“でも、映画化するなら何が事実か決めないと・・・”
“それは重要じゃない。「本当の事実や裁きは存在しない」がテーマだ。「人気」で決まるんだ”
“映画にならない”
“なるとも!”
“その夜、女の子二人に何があったのか見せないと・・・”
“それはウソと同じだ。僕が想像する「事実」だ。実際は何も知らない。まさに神なき世界での推理小説。答えのないパズルだ”

筋は通っているんですが、それが混乱の入り口になっちゃうんですね。 フェイク・メディアの免罪符にもなっちゃうだろうし・・・

とまあ、困ったまま映画は終わってしまうので、その混乱は私の問題になってしまうのでありました。 いやはや。。。
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