rensaurus

スター・ウォーズ/最後のジェダイのrensaurusのレビュー・感想・評価

3.4
見た目は美味しそうなのに噛めば噛むほど不味くなっていくような作品。

惑星カントニカのカジノでは今までにない煌びやかなビジュアルが見られることや、クレイトの戦いやプレトリアン・ガードとの戦いでの赤を基調とした絵作りは目新しさを感じられて非常に良かった。がしかし。それ以外には文句が止まらない。

スターウォーズの続編として何か新しいことをしたいという思いは伝わるが、それにしても映画としての完成度が低い上に世界観を存分に踏み躙るため、「毒舌で気を衒った面白い人」にしようと思ったのに「ただ悪口を言い、空気が読めない不快な人」になってしまったかのようなイタい出来に仕上がってしまった。愛がない裏切りはただの攻撃でしかない。

まず言いたいのはレイ、フィン、ポー、カイロ・レンという新3部作のメインキャストが全員バカか意味不明なキャラになってしまっていることだ。あの強いフォースを持つレイが何でもない親から生まれたという設定もさることながら、なぜフォースが強いのかという説明すら無いので、「何故か強い人」が出来上がってしまい、全く乗れない。フィンとローズはほとんどの行動がバカでコメディ路線のくせにロマンスを持ち込もうとするので居心地が悪い。ポーは無鉄砲バカ過ぎてポッと出のホルドー提督にハブられ、彼女も置き土産バカを残して退場していく。魅力的なカイロ・レンがダークサイドに堕ちた理由もルークに襲われそうになったからというスケールがちっさい理由が用意され、カイロ・レンファンでさえゲンナリしたことだ。もっとジェダイに絶望しろよ!ジェダイは執着を生むため恋愛禁止にしているが、愛というのは人間の基本的な感情なのにジェダイではそれすら許されない。ダークサイドに堕ちるジェダイも定期的に生んでおり、ジェダイが安定をもたらすということにも懐疑的になってほしい。お前は何でベイダーに憧れているんだよ!愛を持ちながら世界に安寧をもたらすためだろ!ただ、ジェダイ側にもダークサイドにも絶望し、新しい秩序をもたらそうとレイを勧誘するところは支持している。カイロ・レンらしい提案で最高だ。

極め付けはファーストオーダーもバカとザコばっかりということだ。ダースプレイガス並みの強敵を想像させたスノークは何の緊張感もないままあっさり死に腐ったり、ボバ・フェット並みの強キャラを想像させたキャプテン・ファズマも何でもないところであっさり死んだ。ハックス将軍に至ってはただのかませ犬に成り下がった。この宇宙にまともな人間はいないのか…。ファーストオーダーもレジスタンスも関係なく利益を追求するDJが1番まともに思えてくる。

今作で最も頭を悩ませるのはルークの扱いだろう。ルークが宇宙の端くれで仙人のように生活しているところは悪くはない。ちょっとした小ボケをかますところも帝国の逆襲のヨーダっぽくて笑える。ただ、ベンの暗黒面に怯えて殺そうとしたことがイマイチ納得できない。ベイダーにさえ光を見出したルークなのに、完全に染まっていないベンを殺そうとするか?もっと心理的に、ベンがジェダイに失望したことに絶望を感じて欲しかった。そうすれば、あのどうでも良くなった感が納得できる。お前が殺そうとしてベンがああなったなら引きこもってないでお前が何とかしろよと言いたくなる。

初見では何だか凄そう…?と思ったが、考えれば考えるほど不満が出てくる作品で、映画を観た後に自分で噛み砕く時間がどれほど大切か教えてくれる作品だ。不本意だが。
rensaurus

rensaurus