イホウジン

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明けのイホウジンのレビュー・感想・評価

3.7
楽しさに先走って失ったオリジナリティ

まるで「最後のジェダイ」のストーリーが存在していないかのような展開で、単純に驚いた。ルーク三部作へのリスペクトやオマージュを全面に押しだした今作の内容は、よく言えばファンサービス満載でエンタメ映画としての極地に達したものだが、悪く言えば“楽しさ”を優先した代償として独創性と中身が失われてしまったように感じる。正直なところ、今作を通して過去のスターウォーズを越える気概を感じられず、むしろ過去の型に甘んじているようだった。
同じことを書いていて申し訳ないが、前作が存在しないかのように進んでいったことは本当に再度考えるべき事案であるように思える。「最後のジェダイ」の優れていた点は、スターウォーズという一つの巨大ジャンルをうまく“使いこな”せていたことだろう。その精神はアナキン三部作においても共通していて、あくまでルーク三部作が基盤のスターウォーズをリスペクトはしているがその中で“新しいスターウォーズ”としての独創性を模索していた。故にアナキン三部作では、ルーク三部作では描かれなかった開戦のリアリズムを主軸とした“らしさ”を確立できた。また、「最後のジェダイ」においては戦時における善悪の不透明さや“血”の因縁の克服を描くことでEP1からの時の流れの再結合を試み、それを通してルーク三部作との世界観の類似を崩そうと試みていたように思える。
しかしながら、EP9で監督が戻り、世界線は再びルーク三部作の世界へと引き戻された。体系的には前作が打ち出した問いに対するアンサーは出るが、どうにも薄っぺらさを感じてしまう。結局道筋はEP6とほぼ同じだし、レイア姫の存在感が強すぎて本来の主人公のレイの印象が薄かった。そして何より、アナキン三部作の文脈を一切感じられなかった。きっと監督はルーク三部作を愛しているが上にそういった行動に出ているのかもしれないが、過去を“愛する”か“使う”かでその作品の内面は大きく変わるのだと気付かされた。

ただ、今作の一連の展開を頭ごなしに批判するつもりは無い。というか、熱狂的なスターウォーズファンの期待に応えるにはああするしかなかったようにも思える。「どうせ批判が湧いてくるなら一番リスクの低いものを」と考えたであろう制作陣を否定はしない。
でも批判覚悟で真正面からスターウォーズを「終わらせる」映画にして欲しかったとも思う。

というか、あの終わり方、その気になればEP10も作れますよね?やはりディズニーは金の亡者なのか?
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