皿鉢小鉢てんりしんり

スロウ・ウエストの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

スロウ・ウエスト(2015年製作の映画)
3.6
最も良いシーンは紛れもなく、濡れた衣服を馬の間にロープを渡して、干しながら移動するというアイデア。もちろん、このロープで引っかかって的な展開をアクションに活かすことを忘れるようなヘマはしない。

インディアンの矢が主人公の手のひらにぶっ刺さるところが、とてもよい。何がどうなってるのかさっぱり受け入れられない上に、隣のファスベンダーは冷静すぎて逆に何が起きてるのかちゃんと伝わってるのかどうだかといった趣向。

クライマックスで、主人公の縛られた手が上下するアップを挟み込むのが、よい。なぜよいか、身も蓋もなく言えばあれはマスターベーションの動きに他ならぬからで、それはこの映画のテーマそのものだから仕方がない。移民前の回想として、同時期のヨーロッパが映るのもウエスタンでは新鮮な感じがする。

しかし全体的にこの若造の甘ったるいロマンチシズムを、オフビートネオウエスタンの文脈にうまく落とし込めたかと言えば、苦しいものがある。本来ならネオウエスタンの良作と呼んでも差し支えなかったろうに、クレイグ・ザラーが出てきてしまってすこぶる部が悪い。いっそキノコ食ってビーバスアンドバットヘット紛いのトリップシーンを入れてたら伝説に残ったろうに……