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ぼくが数学を嫌いな理由のcerohannのレビュー・感想・評価

ぼくが数学を嫌いな理由(2012年製作の映画)
5.0
邦題からは数学の欠点をネタに監督の人生とかを面白おかしく、ドラマチックに描く内容だと予想したけど、自分の頭で考えることの普遍的な大切さを刺激的に教えてくれるドキュメンタリー映画だった。

色々な人の色々な数学の捉え方が出てきた。
冒頭では数学がいかに無意味で、キツくて、暗くて、つまらないものか一般の人たちの声があった。
解法が人によって変わるからと、数学は真実や完璧なものではないと言う数学教師がいた。
数学は計算するだけが仕事ではなく、新しい概念を考え生み出す工場でもあると語る数学者がいた。門外漢にしてみれば、新しい定理を生み出す創造性には計り知れない壮大さを感じるが、現在では年に約8万の定理が生み出されていると言う。
数学における独創性について、別の数学者は、数学者は既に存在するものを見つけるだけだと述べていた。
そう遠くない将来にパソコンが人間を追い抜き、命じられなくても定理を作るようになると予想して、数学者の最後の世代を夢想する男性に対して、数の問題を解くのは生来の性質で、「人間は数学を続ける。コンピュータに抜かれてもね」と言い返す同僚がいた。
歴史の究極的な目標と同じように、数学も未来を予測しようとしてきたことを知った。数学教師は未来を予測しようとするのは人間の性質だと言っていた。

専門家同士の会話が性癖だった。
専門家の集団がやるだけで、ただの山登りも刺激的なものに見えてくる。

「権威を信じるな、自分で確かめろ。これは数学で大切な心構えだ。他人の結果を利用せず、自分で確かめないと。自分の頭でよく考え、公式を使うだけでなく、独自の思考を深めることだ、休まずにね。」

理想の実現には時間と労力が必要で、
この社会が、解答の正確さと速さを二の次にしてくれる社会であって欲しいと思った。「試行錯誤や方向転換を繰り返してこそ物事の理解は深まる」という言葉があって、悩む時間も無駄ではないと教えてくれた。問題を解くことの効率を重視して、表面的な理解に留まらせてしまう社会ではなく、計算の速さより思考の深さを重視する社会であって欲しいと思った。

(字幕にて)
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