こなつ

国際市場で逢いましょうのこなつのレビュー・感想・評価

国際市場で逢いましょう(2014年製作の映画)
4.0
韓流スターの中でも正統派二枚目のファン・ジョンミン。独特な雰囲気がある彼はとても魅力的で気になる存在。顔が貴乃花親方にちょっと似ている。彼の代表作のひとつ「国際市場で会いましょう」を今回再鑑賞。かなり前に観ていたので忘れていた部分もあったが、やはり胸が熱くなった。

この作品で興味深いのは、朝鮮戦争、ドイツ鉱山への出稼ぎ、ベトナム戦争と当時の韓国の時代背景が丁寧に描かれているところだ。一家を背負って国に翻弄されながらも、家族のために必死で働いて生きてきたひとりの男性の生涯が彼の視点で描かれている。

ユン・ドクス(ファン・ジョウミン)は、1950年代朝鮮戦争の動乱の中、故郷興南からの脱出時に父とすぐ下の妹と生き別れた。母と他の弟や妹と一緒に父の妹が住む釜山の一角の国際市場で暮らし始める。やがて大人になって、彼は家計を支えるために西ドイツの鉱山に出稼ぎ(1960年代)に行ったり、ベトナム戦争の戦場に技師として赴任(1970年代)したりした。自分は船乗りになりたいという夢があったのにそれも諦め、生死の瀬戸際に立たされる状況に度々あいながらも必死に激動の時代を生き抜いて行く。

物語は、年老いてかなりの頑固じいさんになっていたが、妻のヨンジャ(キム・ユンシン)と仲睦まじく、子供や孫たちに囲まれて幸せな日々を過ごしているドクスが過去を回想する形で進む。子供の頃から仲が良かった親友ダルグ(オ・ダルス)との深い絆、開発により高い値がついた叔母の店だった雑貨屋「コップンの店」を売らないと言い張るドクスの心の内、過去の回想の中でドクスの本当の思いが明かされて行く。

ドクスがどんなに辛くても家族のため、いつも笑顔を絶やさず我慢してきたのは、別れ際の「私がいなくなったら、お前が家族を守れ」という父との約束を守ろうとしていたから。いつか父が戻ってくるなら「コップンの店」しかないと思って必死で店も守り続けた。アメリカに里子に出されていた妹とは再会できたが、結局父は戻って来なかった。しかし、父との約束を懸命に守ってきたドクスの生き様は、私達の胸を熱くする。

実話ではないけれど当時の時代に沿ったストーリーの中、実在していた人物も数人登場するので、ドクスの様な青年が本当に生きていたのではないかと思わせる演出が素晴らしい。マイケル・ジャクソンも着ていたという有名なファッションデザイナー、アンドレ・キムや1970年代を代表する韓国の演歌歌手、ナン・ジン、そして相撲選手のイ・マンギの少年時代、1980年代後半朝鮮戦争で離散した家族を探すテレビ局の映像など、本当に良く作り込んだ作品であり、何度観ても流腺が崩壊する感動作。
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