Mrタクヤン

悲しみの忘れ方 DOCUMENTARY of 乃木坂46のMrタクヤンのレビュー・感想・評価

3.6
会社の元ボスが「乃木坂ファンとかじゃないけど、ドキュメンタリー映画はすごく出来が良かったのでオススメです」とか言ってて、その時はまたまた本当はファンのクセに〜なんて思ったけど、そのことをふと思い出してなんとなく観てみたら、ものすごく面白かった!
自分のように有名な人は知ってるけど、ほとんど詳しくない……という人にこそ観てほしい。

乃木坂結成からだいたい3年くらい?の期間を密着してグループと個人の成長を描いているのだけど、まず驚いたのが、ナレーションがすべてメンバーの母親のコメントということ。
アイドルのドキュメンタリーを撮る上で、これはものすごい発明だと思った。
ずっと一番近くで見てきた我が子がどこか遠くへ行ってしまう不安と、自分の手を離れてどんどん立派な大人へ育っていく喜びと不安がとてもリアルで、アイドルもひとりの人間の子なんだなぁと身近に感じられた。
西野七瀬のお母さんの、「せめて高校を卒業するまでは一緒に暮らしたかった」という言葉が泣けた。

結成のオーディションと並行して、主要メンバーの来歴が語られる。
小学校でいじめにあっていたり、中学で引きこもりになったり、家庭環境だったり、理由は様々だが、集団に属することが苦手だった子供たちが「乃木坂」という居場所を見つけ、救われていく。
彼女たちにとって乃木坂に入ることは「宿命」だったのかもな、なんて思った。

乃木坂メンバーが出演する舞台の公開オーディションが印象的だ。
このオーディションは舞台上でメンバーが一人一人自己アピールをして、その場で審査され選ばれなかったメンバーは即舞台から降りるというルール。
そして選ばれず、舞台裏で「私と働きたい人なんていない、もう辞める」というメンバーに対して、生駒里奈は号泣しつつ、
「これが実力なんだよ!」と正面から本気でぶつかり合う。
華やかな世界にいるけどまだ18歳やそこらの子供なんだよな、と改めて思う。
残酷な世界だ……。

そんな生駒里奈も、初めてセンターを外された日、狂った様に笑いながら駐車場で走り回る。
ゾッとした。
想像を絶するプレッシャーを受け続け、解放されたとき人間はこうなるのか。

芋っぽかった子たちがどんどん洗練されて大人になっていくのが明らかに見て取れるのが面白い。
特にセンターを任された人間は、どんどん人間的に成長し、美しくなっていく。
まさに立場が人を変えるとはこのことなんだな。

結成当初乃木坂は「AKBの公式ライバル」として結成されたらしい。
そういえば当時のテレビでそんなこと言ってたような…という感じだが、やはり初めは相当比較されていたようだ。
2022年現在、AKBを乃木坂のライバルと思っている人はほとんどいないだろう。
AKBが凋落したということもあるが、それはやはり乃木坂メンバーのものすごい努力を積み重ねた証だと思う。
「追うものは追われるものより強いんで。」
菅原文太のセリフを思い出した。

この映画で描かれたメンバーのほとんどは既に卒業してしまったようだ。
追うものから追われるものへと成長した乃木坂46が更なる進化を遂げるのか、それともAKBのように時代に置いていかれてしまうのか、今後に期待したい。
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