スキピオ

悲しみの忘れ方 DOCUMENTARY of 乃木坂46のスキピオのレビュー・感想・評価

3.5
<娘を持つ親世代にこそ響くのでは>

某冠番組を毎週みている程度の知識です。

アイドルグループの歩みにメンバー母親の語り(娘への想い)を織り込むという「着想」の勝利。これに尽きる。このおかげで"刹那的な"アイドルの物語でもあり、"普遍的な”母娘の物語でもあるという重層的かつオリジナルな映画になった。「Mommy」に近いと言っても過言ではないくらい、これは年頃の子を持つ親世代にこそ響くのではないか。本筋がグループの歴史を追うのに駆け足気味、やや平凡だっただけに、これがなかったらどうなっていただろうか。

グループ内での競争で自分らしさに悩み苦しむ彼女たちに「きれいっていうのは才能なんだからね」という樹木希林が海街diaryの撮影時にあの四姉妹に言ったという言葉をかけてあげたくなった。あななたちは既に素晴らしいものをもっているじゃないかと。自分らしさとかオンリーワンが過度に期待される現代日本社会の縮図としても興味深い。

PV中心の監督だけあってインタビューパートでのメンバーや風景の美しい切り取り方は素晴らしく、ドキュメンタリーなのに映像に品位があるという不思議な体験。加えて、自身が撮ったわけではないメジャーアイドル数年分の映像資料を元にドキュメンタリーを作るという無茶なオーダーにもきちんと形にして答えたのも評価したい。

ただアイドルをドキュメンタリーとして撮るときに「大人(運営)」が不自然に出てこないのはズルいなと、この手のを観て毎度思ってる。

(あと本家もやっているとはいえ)大人数グループだからって数人にフォーカスして映画にするっていうメソッドは「逃げ」だ。当然とっ散らかるのはわかるけど、ギリギリ不可能じゃない人数なんだから、やはり全員の顔と声(コメント)を少しでも入れるべき。だってそういうグループなんだから。タイトルにグループ名を銘打っておいて大多数をクレジットのみで済ますのは酷だ。

ラストのリフレインでの「悲しみの忘れ方」の「答え」(とそれに含まれるちょっとしたどんでん返し)にはちょっとグッと来た。