クロスケ

ボス・オブ・イット・オールのクロスケのレビュー・感想・評価

3.8
ラース・フォン・トリアーは映画作りに何かしらの制限を設けることで、ゲーム的な遊び心を作品に導入させたい趣味の持ち主のようです。(ドグマ95に基づいて制作された『イディオッツ』然り、床に白線を引いただけの舞台装置で撮影された『ドッグヴィル』然り)

本作はオートマヴィジョンと呼ばれる手法を用いて撮影されており、(コンピューターがランダムにカメラをコントロールし、カメラワークをオートメーション化したシステムらしいのですが、勉強不足で具体的にどんなものなのかいまいちわかっていません…)被写体が画面から外れていたり、同ポジ気味のショットが細かく繋げられたり、最初は違和感から見辛さはあったものの、次第に慣れてくると、作為のない偶然性が役者たちの演技を浮き彫りにしていく感覚にのめり込んでいきます。

一方で編集の切れ味は鋭く、思いきりの良いリズムで切断され、繋ぎ合わされていく登場人物たちの会話劇には『ドッグヴィル』のような緊張感が漲っており、フォン・トリアーの流石の手腕が垣間見えます。

芝居とリアルの狭間で右往左往するボス役のクリストファが滑稽な、皮肉と嫌味たっぷりのフォン・トリアーらしいコメディの佳作です。

※ラストの監督自身によるナレーションは一言余計な気はしましたが、変わり者で有名なフォン・トリアー流のジョークはご愛嬌ということで。
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