てるる

疑わしき戦いのてるるのレビュー・感想・評価

疑わしき戦い(2016年製作の映画)
3.5
ジョン・スタインベック原作の「二十日鼠と人間」という映画がベスト10に入るくらい好きなのだけど、これも同じくスタインベック原作の小説を映画化した作品。

二十日鼠〜は原作も読んだけどこっちは未読。
でも「怒りの葡萄」「二十日鼠と人間」と同様に大恐慌時代の季節労働者たちの苦労と苦悩、そして愚かさを描く。

監督・主演はジェームズ・フランコなんだけど、こういうの観るとホントに真面目な人なんだろうなと思う。俳優になるために中退した大学に入り直して文学専攻したり、ボランティア活動に精を出したり。
売れだした頃のブラピもイケメン俳優枠に入るのが嫌でブッ飛んだ役とかヒットしなさそうな小難しい作品ばかり出てたけど、まさにそんな感じ。
でもそんなフランコに共感したのか何なのか、低予算なのにキャストはえらく豪華!

労働者達を安い賃金でこき使う男にロバート・デュバル、労働者達のリーダー格にヴィンセント・ドノフリオ。その他にもエド・ハリス、サム・シェパード、ジョシュ・ハッチャーソン、セレーナ・ゴメス、ブライアン・クライストンなどなど。

ストーリーも重い。
搾取されている労働者たちを扇動してストライキを起こすことに成功する主人公とその仲間たち。
しかし支配者側も陰謀をはりめぐらせ、安くてもいいから金が欲しい奴や女に目がくらむ裏切り者などが出て来て崩壊していく。

アメリカ映画では黒人奴隷制度のことがよく描かれるけど、これを観てると白人だろうが底辺の人間は弱い立場を利用され、いいように使われるし、支配者側は平気で人を殺すし犯罪行為を犯す。
持つ者と持たざる者の違いがはっきりと分かる。
確かに安くても賃金は出てるけど、彼らは尊厳を奪われ卑屈になって最低限の生活ですら諦めている。
カイジの地下労働施設を思い浮かべるとよく分かるかも。

それでも権利や誇りを持って立ち上がり、戦い続けた人々もいる。
それが後々ワグナー法など、現在の労働基準法の基礎とも言える制度を作り上げていくことになる。
日本でも電○やワ○ミなど自殺や過労死問題やブラック企業が問題になってるけど、時には勇気を持って立ち上がらなければ変わらないのかもしれない。
自殺や過労死まで追い込まれる前に、こういう映画を観ると何かが変わるきっかけになるかもしれない。
そして自分も含め、社畜の人にオススメです!
てるる

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