あんときの井上

ブラインド 視線のエロスのあんときの井上のレビュー・感想・評価

ブラインド 視線のエロス(2014年製作の映画)
3.6
「べ、べつに変な意味で見たんじゃないんだからね?」

盲目の妻は小説で描く女性に自己投影しているが、観客は小説の女性が妊娠していることで妻も妊娠している可能性に気づく構成は、小説世界からも現実世界へ作用し合うことがあると観客にわからせるためではないか?

また、妻は盲目であるため、想像する現実世界と想像する小説世界の区別が比較的に判然としにくいのは想像に容易い。つまり、盲人の方は一層現実世界と小説世界を同じ世界だと錯覚し易いのではないか?

加えて、映像表現により現実世界と小説世界を混同させるシーンがあることも、境目が不明瞭であることを示唆しているのではないか?

従って本作は、盲人の現実世界とは、小説世界などの空想世界とさほど大差なく作用し合いながら構成されているがために、豊かで移ろいやすく虚ろう。

よって、ラストにおける盲目の妻は、自分の世界を変えてくれる面白い人を待っている。

退屈な独りよがりの世界から飛び出して妻の世界へ遊びに来てくれるような夫に、妻は期待しているのである。
あんときの井上

あんときの井上