うそかわ

暗くなるまで待ってのうそかわのレビュー・感想・評価

暗くなるまで待って(1967年製作の映画)
3.5

1967年、テレンス・ヤング監督のサスペンス映画。主演はオードリー・ヘップバーン。この映画でアカデミー賞ノミネート。もともとはフレデリック・ノットの舞台を映画化したもの。そのため、最初の数分以外はほとんどヘップバーン演じる主人公の部屋が舞台となり、場はほとんど動かない。

密輸したヘロインを巡る物語。
ある日、写真家の男は空港で見知らぬ女から気持ち悪い人形を預けられ、わけもわからぬまま、家に持ち帰る。これは見知らぬ女がヘロインを組織から独り占めしようと、ヘロインの隠された人形を全く関係のない写真家に預け、そして逃げた後にそれを引き取ろうと思ったのだ。しかし、犯罪グループはそれをかぎつけ、アパートにたどり着く。そこには盲目の写真家の妻(ヘップバーン)と大きな金庫があった。犯罪グループの3人はこの目の見えない婦人から人形をだまし取ろうと、一芝居打つことにする。しかし、盲目の婦人はその芝居を最初信用するものの、その空気に段々不信感を募らせていくのだった・・・。

密室劇+サスペンスということで非常に狭い空間でよく練られたプロットが描かれる。
はじめは日常劇なのだが、それが話の複線や、あとあと細かく効いてきたりして、見ていてなるほど、と思うシーンが多い。そして、目の見えない、圧倒的不利な婦人が、次第に不安を募らせていく描写はさすがサスペンスと言える。映画ではなかなか見ることができない長い暗転も、目の見えない婦人の心理的圧迫を見ている人に訴えかけるものがある。舞台から映像化したという利点を最大限生かしている。

細かいところはかなりご都合主義的なところがあるけれど、(ナイフであいつはすぐああだったのに、あいつは長々とああだったみたいな)脚本がかなり緻密で舌をまく。ヘップバーンも見ていて、盲目だと疑問に思わせないきちんとした演技。

場面展開が少ないので、たしかに目には退屈である。
しかし、ヘップバーンの心情に寄り添って見れば、心情展開のすばらしさに気づけると思う。
うそかわ

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